6 なかなおり?

 黒鋼は、ファイをのぞき込むと言った。
「もういいか」
「ん・・・。ごめん、待ちくたびれちゃったね・・」
「決まったか?」
さっきの一つだけ言うことを聞く件のことである。ファイは、ちょっと考えて、言った。
「お願いの前に質問してもいい?」
「あぁ。」
「ありがとっ」
ファイがにっこりと笑い、黒鋼はどきっとした。
 ファイの中を色々な疑問が駆けめぐる。
「どうして追いかけてきてくれたの?」
「オレのこと、どう思ってるの?」
「黒様って呼んでもいい?」
「黒様のこと、これからも好きでいてもいい?」
「ずっと一緒にいたい」
どれも聞きたくて、言えない。でも、今言わなければ、もう黒鋼と話すことさえないだろう。
ファイは意を決して、聞いた。
「どうしてさっき、追いかけてきてくれたの?」
「謝ろうと思ったんだよ」
ブスッとした表情で黒鋼は答えた。
「でも追いかけなくても、また明日とか、そのうちとか・・・」
「いつまでもぐずぐずしてんの、嫌ぇなんだよっ。だいたい明日おまえんちに行ったって、
ドア開けねーだろーが」
「ううっ」
全くその通りである。
「じゃぁ、これからも黒様って呼んでもいい?」
「別に呼ぶななんて言ってねぇだろ。今まで通りでいい。」
ファイは驚いて聞いた。
「じゃぁ、これからも今までみたいにお話とかしていいの?」
「誰がダメって言ったんだよ」
変な奴、とばかりに黒鋼が言う。
「だって・・・オレ男なのに・・黒様のこと・・」
そこまで言って、真っ赤になって下を向く。意を決する前に、黒鋼が口を開いた。
「俺のこと、何だ?」
意地の悪い言い方だ。ファイは顔が真っ赤になるのが判った。
「んと、あの、オレ・・あ、あのね・・・」
心臓が鋼のように鳴り響く。この音が黒鋼に聞こえてしまうのではないかと、思った。なかなか
言い出せずに下を向いてしまったファイの顔を黒鋼はのぞき込み、もう一度わざと らしく聞いた。
「俺のこと、なんだ?」
ファイはほんの少しの間俯いていたが、意を決して顔を上げた。
「あのね、オレ、黒様のことが・・・好き・・・。黒様はオレのこと、どう・・?」
消え入るような声で、いや、最後は声にならず、また下を向いてしまった。黒鋼は今まで通りでいいと
言ってくれたが、自分のことを好きなわけがないと思い出したのだ。
 黒鋼は、ファイの肩を掴むと、顔を上げさせた。そして、ニヤリとして、言った。
「さっきのエロい顔してみろよ」
「!?」
「さっき、すげぇ感じてたんだろ?」
「・・・っ!」
耳まで真っ赤になるのが判った。黒鋼は続けた。
「そうしたら答えてやるよ」
「そ、そんな、だってオレのお願いを聞いてくれるんじゃなかったの?」
「あんだけ質問したんだからもういいだろ」
黒鋼は勝手に決めつけると、ファイを抱え上げ、さっさとベッドに移動した。
「あの、黒様、オレ、あっ、はぁっん・・」
最後は嬌声に変わっていた。黒鋼は乳首を刺激し続けながら黙々と背中のボタンを外し、 胸に口づけた。
白い肌に赤いバラが咲いてゆく。
「すっげ、綺麗だ。」
さっきも言ってた台詞だ・・・。 ファイはあまりの快感に頭がしびれるような感覚を覚えながら思った。
その時、信じられ ない言葉が耳に飛び込んできた。
「好きだ」
錯覚だろうか? 好きになって欲しいという願いが幻聴を呼んだのかもしれない。幻聴でもいい。
大好きな黒様が抱いてくれるなら。ファイは、ぼうっと、声の余韻に浸った。
「好きだ・・」
黒鋼はもう一度呟くように囁いた。ファイには聞こえていないかもしれない。でも、そんなことは
構わなかった。
 ファイが、欲しい。 ファイは先走りの液を垂らしていた。それを指でぬぐい、秘部にこすりつける。
ローショ ンを用意していたことを思い出し、上着のポケットから取り出すと塗ってみた。
「ひゃあ、なに?」
ファイは思わず伏せていた瞳を開け、声を上げた。
「冷たいか? 気にするな、すぐに良くなる。」
黒鋼はそう言うと、指を2本入れ、少し動かしてみた。
「あ、あん、くろさま・・・はぁ・・」
かなり感じている様だ。3本に増やして、激しく刺激する。
「あぁん、黒様、あん、あ、そこ、だめ、あぁんんっ・・」
すぐにファイが一番感じるところを見つけた黒鋼は、指を抜くと大きくなった自分のモノを挿れた。
ファイの体中に黒鋼が押し入ってくる。根本まで突き刺さったその瞬間、ファ イは勢いよく放出した。
「ずいぶん早えな。おしおきだ」
黒鋼はファイから自身を引き抜いた。
「あぁ、そ、・・・」
ファイは思わず声を漏らした。それを聞き逃す黒鋼ではない。
「抜く時さえ、そんなにイイのか。淫乱野郎にはキツイお仕置きがいるな」
そう言うと、ファイのショールを持ってきた。両腕を後ろ手で縛る。
「や、こんなの。黒様、やめてっ」
懇願も、黒鋼を煽るだけ。
「咥えろ」
黒鋼はファイを立ち膝にさせ、口に含ませた。大きすぎて根本まで入らない。
「舌を使えよ」
ファイは苦しそうにしながらも舌を動かし始めた。ぴちゃぴちゃといやらしい音が部屋に響く。
黒鋼は、ファイの乳首をそっとなでた。
「んっ・・」
ファイの舌が止まった。
「舌動かせ」
ファイは、口の中の黒鋼と乳首をなでる黒鋼の指を感じて、ひくひくと体を震わせながらたどたどしく舌を
動かした。
 「あぁ・・」
思わず黒鋼は声を上げた。勢いよくほとばしった白い液体は、ファイの口から漏れただけでなく、
ファイの綺麗な顔を汚してしまった。
「黒様・・にがい・・」
ファイは少し飲んでしまったようだ。顔をべとべとにしたファイを見て更に欲情した黒鋼 は、顔を拭いてやると
後ろ向きにさせた。
 そしてもう一度、激しく責め立てる。
「あぁぁ・・・くろさま・・・はぁ」
 先刻さぐりあてた場所を何度も突き上げ、その度にファイが嬌(うた)う。何度かファ イが果てたのを
確認して、黒鋼はやっとファイの両腕を自由にした。
 「痛いか? ショールだから跡はつかないはずだ」
黒鋼はそう言うと、無言の抗議をしているファイと目が合い、付け加えた。
「気持ちよかったろ?」
「なにそれぇ!」
ファイはグーで殴りかかったが、反射神経のいい黒鋼に当たるはずもなく。逆に腕を掴まれ
組み敷かれてしまった。
 むくれているファイに、黒鋼は優しく口づけた。
「そんな顔すんな。気持ち良かったろ? だからまた来ような」
「え・・それ、どういうこと?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔でファイが聞くと、黒鋼は掴んだ腕を放し、明後日の方向を見ながら言った。
「だから、先刻の質問の答えだ」
ファイは驚いて起き上がった。黒鋼が真っ赤になっている。
「じゃぁオレのこと・・・黒様は・・・?」
黒鋼はファイを見つめ、言った。
「好きだよ」
そしてもう一度、優しく口づけた。
 いつの間にか日付が変わっていた。が、二人の夜は終わりそうになかった。


おまけ

 「そういや、何でおまえがミス堀鍔なんだ?」
「あぁ、それ。なんかねー。文化祭実行委員の子がふざけて決めたみたいだよ〜」
「なんじゃそりゃ。(怒)」
「あ、だいじょーぶ。黒様は本当に投票で1位だったから」
「そんなこと言ってんじゃねー!」
「あはははは・・で、オレがミスターの方で2位だったらしいんだ。で、面白いからって侑子先生に
相談したら、いいって言ったらしいんだよね。」
「あいつに言えば面白がるに決まってんだろっ、誰だ、実行委員は!」
ちゃんちゃん!



END