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わんこ物語7

「黒わーん、お風呂空いたよぉ♪次どーぞーv」
せっかくさっぱりした身体がまた汗ばんでしまいそうで、はしたないけれども下着と首に掛けた柔らかいバスタオルだけの
姿でペタペタとリビングへと向かう。おう、と小さく返事をしつつ顔を上げた黒鋼は、読んでいた雑誌を派手な音を立てて
取り落とした。
「な・・ッおま・・!早く着ろ寝巻きを!!」
「えー?何慌ててるの今更ー、オレと黒わんの仲でしょv」
わんこだった黒鋼はオレの格好なんか何も気にしてなかったのに、最近の黒鋼はどうも他人行儀だ。

可愛いペットが思いがけず人間に変身して、早一ヶ月。お話も出来るし、どこへでも一緒に出掛けることが出来て
本当に嬉しいーーーーと思っているのは、オレだけなのかな。
黒鋼の気持ちが、よく分からない。
難しい顔をしている彼は何事かを随分思い悩んでいるようだけれど、何を困っているかは何度聞いても教えてくれないのだ。
口にしにくい悩みもあるだろうとは思うけれど、それでも。オレは黙って黒鋼と寄り添っているだけでも、いつも悩みなんて
すぐ溶けてしまうのに。人間になった彼は何故か距離を置きたがり、それでも強引に引っ付くと眉間の皺が余計に
深まってしまう。黒鋼にはたくさん助けられ癒されているのに、オレは彼を何も助けてあげられないのだろうか。
(ひょっとしてー・・)
犬と人間では、嗜好がかなり変化するのかもしれない。
初めて一緒に大学に行った日言い寄られてたようだったから、あれから黒鋼を女の子には引き合わせないようにしている。
(だって黒わんに、オレより好きな人が出来たら・・)
そう思うだけで、胸がズキリと痛む。そんなのは絶対に嫌だ。だって黒鋼は、大事なペット・・ううん、大事な
パートナーなんだもの。
でも人間になると、飼い主といえど男同士でなんかより本当は女の子と触れ合いたいのかもしれない。
黒鋼がガールフレンドを作って出て行ってしまう後ろ姿を想像したら、視界がじわりと滲んだ。

「ねぇ、黒わんは・・オレのこと、どう思ってるー・・?」
わんこだった頃はその気持ちが手に取るように分かったのに、今は曇り硝子の向こうにいるみたい。大好きな紅い瞳の奥に
本音を探ろうとしても、所在無さげに逸らされてしまう。口を開こうとしない彼に向けもう一度問い掛ける前に、輪郭が
陽炎のように溶け漆黒の凛々しいわんこが目の前に姿を現した。黒鋼は答えに困った時、わんこに戻ることがよくある。
元の姿に戻ると、以前と変わらず尻尾を振って飛び付いてくれるのだけれどーーーなんだか誤魔化されてる気もする。
こうして嬉しそうにじゃれついてくれる、それが答えなのだと信じたい。
でもそれなら、彼はいつも何を悩んでいるのだろう。
「言葉では、答えてくれないんだねー・・」
ソファで両膝を抱えて俯くと、洗い髪からぽたりと雫が落ちた。バスタオルで水滴を拭うオレに擦り寄ってくれる
あたたかな感触は、ふわりと心を和らげてくれるけれど。
「ねぇ?オレ黒わんのコト、大好きだよ。世界中の、誰よりも大好き。だから何処へも・・行かないでねー・・」
長い毛並みを梳き、太く逞しい首にしがみ付く。いつも心を癒してくれる、何より大切な存在。
あったかくて、優しくて。いつまでも、ずっと一緒にいたいのにーーー
何だか切なくなって、ほろりと一粒涙が零れた。
くぅと小さく喉を鳴らした黒鋼が、大きな舌で涙を舐めとってくれて、その優しさにまた胸が痛む。
君さえいれば、他に何も要らないのに。黒鋼は、そうではないのかもしれない。
オレでは一番の幸せを与えることが出来なくて、人に変化できるようになった彼には他の場所に幸せがあるのだろうか。
「・・ねぇ、黒わんはオレのこと、一番に・・思ってくれてるー・・?」
精悍な頬を細い手のひらで包み、微かに震える唇を鋭い牙の並ぶ口吻へと重ねて。白い両腿で漆黒の体躯を捕えるように
挟み込むと、その頑強な身体がびくりと反応した。

その時、いつも太陽みたいに深く優しい紅が、鋭利な刃物のように、反射した。
まるで、狩りをする獣のような。
黒鋼を怖いと思ったことなど一度もないのに、背筋がぞくりとした。

「黒わん、どうしたの・・?」
いつもと様子が違う。
ソファの背凭れに乗り掛かった鋭い爪が、厚い布地を裂き破る。気付くと、闇より濃い漆黒に覆い被さられていた。
やけに呼吸が荒くて、首筋を舐めるざらついた舌がやたら熱くて。
首を甘噛みされて、傷付いた薄い肌から滲み出る血に身体が竦んだ。
(まさか・・オレを、襲う気・・!)
「ダメ・・ッ、く、ろ・・・」
オレにだけは優しいはずの眼差しが、殺気立った色へと変わっている。硬い筋肉で引き締まる巨体は力も凄まじく、
厳つい男が5・6人でかかったって敵いっこないだろう。抗うことも出来ないままに細い首など簡単に噛み千切られて
しまうと、強く目を閉じた。けれど予想に反して舌先は鎖骨を伝い下へと辿り、乳を求める仔犬のように
ぴちゃぴちゃと音を立てて胸先を舐め始めた。
「や・・?!・・ぁあ・・!」
濡れた柔らかいもので胸の突起を弄られる感覚に戸惑い、何かにすがりたくて黒鋼の首を抱いた。向けられた双眸は
鈍く光り、獲物に狙いを定めたようで。脚を割って圧し掛かる獣の舌はさらに下方へと移動し、白い内腿を無心に
這い回る。そして薄い下着越しのいやらしい箇所を、生暖かい唾液を垂らしながら嬲り始めた。
「ダ・・メぇ・・!そんな、トコ・・舐め、ちゃ・・・!!」
飼い犬にこんなことされるなんて、早く止めないといけない。なのに執拗に舐め上げられるたびにそこは形を成し、
布一枚を隔てた刺激がもどかしくてたまらなくて。目の端が熱を孕み、戦慄く胸をただ上下させた。
(オレ・・何、して・・・)
意識に反して、指先は濡れた下着をじりじりと腿へ滑り下ろしてゆく。忙しなく息を吐きながら、淫らな全てを晒した。
「・・アッ・・!は・・、ぁあ・・ッッ」
別の生き物みたいに器用に動く舌が絡み付くまま感じて、つま先が痺れる。待ち侘びたダイレクトな刺激に、悲鳴のような
嬌声を上げてしまう。
黒鋼は賢いわんこだから、自分が何をしているのか分かってしているはずだ。
(オレを・・犯す、気だ・・・)
「は・・・ッあぁ、ぅ・・・ん・・」
肌は火照るばかりで、視界は滲んで何も見えない。気付けば細かに震える腿は、まるで彼を導いているみたいに自ら大きく
開いてしまっている。塗り込められる唾液は孤立の奥へと垂れ伝い、未知の感触に思わず背を反らせた。
力強い舌は唾液を追い、秘めた蕾を丹念に舐め始めた。息が上がり、もう指先も足先までも力が入らない。
「ぁあ・・・!!イ・・・ふ、ぅ・・ん・・ッ」
脚の間に漆黒の獣を挟み込み、まるで悦んでるように響く喘ぎ声。朦朧と霞んでゆく意識の中で、細い糸のような理性が
かろうじてオレを繋ぎ止める。
獣と淫らなことをしてよがる、それは穢らわしい行為だ。誰からも蔑まれるだろう、禁忌の。
(ダ・・メ・・)
身を捩り逃げ出そうとした身体は、うつ伏せのまま強引に圧し掛かられた。黒い巨体を押し付けられては、もうひとつも
動けない。潤みきった瞳で振り向き、掠れた声で哀願した。
「やめて・・黒わん、ご主人様に・・何する気なのぉ・・?」

自分だけのものでいて欲しくて、誰にも盗られたくなくて。
雌のわんこには会わせないようにしていたし、人間の女の子と喋るのも許せなくてワガママ言った。
オレしかいなかったから、オレに欲情したのだろうか。
・・・・・・それでも、黒鋼がオレを求めている。
人になった黒鋼に距離を置かれると、すごく哀しくて。抱き締められた時、広い胸にドキドキしてーーーすごく嬉しかった。
オレだけを、求めて欲しい。
この独占欲は、可愛いペットだから?大切なパートナーだから?
ううん、それだけじゃない。
だって、オレはこんなに。

「あ・・ッ!・・ゃアア・・んッ・・!!」
四つん這いのまま後ろから覆い被さられて、獣特有の荒い息が首筋に掛かる。強張った身体は少しずつ溶け、自身も
固く上向き蜜が滲んでいるのを感じた。背中を擦る固い毛並みの感触、内腿に大きく硬いものが摺り付けられて。
(黒わん・・・・すごく、興奮してる・・・)
雌わんこにでもなく女の子にでもなく、オレに欲情してると思うと胸の奥に悦びが滲んでゆく。
いけないことなのに。自分はおかしい、ペットに襲われてこんなに蕩けきってしまうなんて。
オレは、彼の咆哮を受け入れることを期待している。
「くろ、わ・・ぁん・・」
肘を折り、片頬をクッションに埋めて。操られるように白い双丘を突き出し、名を呼んで雄をねだった。
まるで、発情した雌犬が淫らに誘うように。
「・・・・・ひィ・・ッ!・・・ヤ、・・ァあ、・・・・ぁア・・!」
忙しない呼吸が間近で吹き掛けられ、熱い感触が背に密着して。猛り勃つものが、無理矢理に肉壁を抉じ開けて
侵入してくる。めりめりと侵入する痛みに、涙が絶え間なく零れ落ちるけれど。
でも、痛みだけじゃない。もっと大きな感情が、胸を支配する。
全て受け入れて感じたのは、君に求められて一つになる悦び。
(・・オレ、今・・・黒わん・・と・・・・)
いつも助けて慰めてくれる、オレだけの大切なわんこ。
誰より大好きな君と、一つになりたいと願う自分がいて。
ペットを可愛がる気持ちじゃない、これは恋をする気持ち。
ずっとそばにいてくれて、守ってくれて、大切にしてくれて。
(オレ・・・黒わんのこと、好きになっちゃったんだ・・・・)

「ヤ・・ぁ!!・・・あ・・ァ、ぅ・・・ん・・ッ」
熱く猛るもので激しく腰を打ち付けられるたび、じわじわと全身が痺れ悦楽に溺れてゆく。飼い犬に、獣のような格好で
犯される背徳感さえ今は妖しい欲情を煽り駆り立てる。身体の一番奥まで埋め込まれた肉棒を求めるように、いつしか
獣のように腰を振っていた。
「ぁ・・!!・・イぃ・・ッ・・・く・・ろ・・っ」
零れる甘い喘ぎが、止められない。涙で濡れた頬を優しく舐められる感触に、うっとりと双眸を細め振り向いた。
愛する紅に、オレだけが映り込んでいる。
ーーーーもう、どうなってもいい。
「くろ・・・わん・・」
一際勢いよく突き上げられ背を大きく反らせると、痙攣した身体にどくどくと大量の獣の熱い精が注ぎ込まれて。
同時に自分の欲望も解放され、溢れ出す悦楽は酩酊に沈んだ。



意識が遠のくほどの、快感。
そして次の瞬間、体内に捻じ込まれた熱と背に圧し掛かる重みが、突風の如く消え去った。
(黒・・わん・・・?)
種付けを終え満足したら、もう用はないのだろうか。いくらわんことは言えあんまりだと、痛む身体を何とか動かし
周囲を見回した。
すると、ソファと対極の壁に半獣の姿が見えた。顔面蒼白で冷汗をだらだらと流し、両腕を広げぴったりと壁に引っ付いて
いる。
「・・・・・・わッ・・・・!!!・・・悪、・・・・・かっ・・・・・・・・」
ようやく我に返ったらしい黒鋼は、歯をがちがち言わせつつ消入りそうな声を搾り出した。ぺたりと垂れた犬耳に
両脚の間に仕舞われた尻尾は、自分がしでかしたことの重大さに恐れ戦いているようだ。
あまりの狼狽振りに、改めて自分の惨状を顧みる。破かれたソファの上に横たわる情けないほど細い身体は、
ねばつく唾液にしとどに濡れ、鈍痛の響く下肢には獣の残滓がどろりと滴り布地に染みを作っている。
飼い主に決してしてはならない行為を犯した、ということは間違いない。
「・・・・黒わん・・・・こっち、おいで・・・」
幼い彼を拾った時のように、宥めながら呼び寄せる。
しばらく躊躇い、ついに覚悟を決めたように歩み寄って来た黒鋼は、項垂れて歯を食いしばった。
「あ・・謝ってすむ話じゃねぇって分かってる・・。殴り飛ばすなり保健所に送るなり、好きに処分してくれ・・・」
「全くもー・・・、黒わんは・・・・」
ソファの前に畏まり正座する姿に向け片腕を振り上げると、わんこはびくりと身構えた。けれど耳の伏せている頭を
よしよしと撫でてやると、愛しい彼は弾かれたように顔を上げる。
「理由を教えて。どうしてオレに、こんな悪戯したのー・・?」
わんこはすぐ口を開き、でも何も言葉を出せないまま唇を噛み締め、そして俯いた。
「・・・俺はただの飼い犬だし、こんなこと伝えたらおまえが嫌がるって分かってた。
だからずっと我慢してて、・・・多分その反動で・・・・犬に戻っても、欲求だけ消えなかった。
・・・・・獣の頭じゃ、もう抑えが効かねぇんだ・・・・」
それから、紅い瞳は意を決したように真っ直ぐにオレに向けられた。
人になった彼が、初めてきちんとオレを見詰めてくれてーーートクンと、心臓が高鳴った。

「おまえが好きで、訳が分からなくなって。その気持ちだけで、俺は・・・・・・・」


ずっと、教えてくれなかった悩み事。
あんなに一生懸命悩んでいたのは、オレのことが好きだったから?
我を忘れるほどの、強い強い想いを抱いてくれていたんだ。


「もう、ダメだよ黒わん!わんことこんなコトするなんて、絶対に絶対にイケナイ事なんだからねー!!」
ペンと額を叩くと、さらに犬耳が折り畳まれる。そんな様が可愛くて、叩いた跡にちゅっと音を立ててキスしてあげた。
余程驚いたのか尻尾と犬耳がぴんと立ち、素直な反応に笑みを零しながら囁く。
「そんなどうしようもなくなっちゃう前に、人の姿で抱いてくれればよかったんだよ・・?」



君の存在に、どれだけ救われているか。
どれだけ君が、大切な存在か。
オレだって、ペットを可愛がる気持ちじゃない。
君のこともっともっと、どうしようもなく好きなんだから。




何年後しだ?!念願の獣姦が書けましたアアアアvvvvvこれ書いてるワシは、めっさ輝いてました!!!(最悪だ!!!)
背徳感がたまらんぜ!!禁じられた恋とか萌え!!!
・・・・・・あの・・・ダメでも止められない強いラブだった、てコトで勘弁して下さい・・・・
あと、黒鋼の状態が分かりづらいですね!あんまりに我慢しすぎた為に、獣に戻っても『ファイが好き!えっちしたい!』
という思いが残ってしまったのです。獣には『そんなことしちゃダメだ!』という理性はない為、このような結果になったと・・。
でも結果オーライvv
直線上に配置
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