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わんこ物語8

この世の誰よりも、君が愛しい。
そして君も、同じ気持ちを抱いてくれていたんだ。
嬉しい。嬉しくて、幸せで、どうかなってしまいそう。
胸いっぱいに溢れる気持ちは、破裂してしまうほどで。

(キス・・したい・・)
キスすれば、この苦しいほどの高鳴りを伝えられるだろうか。そっと顔を寄せると余計に胸が高鳴って、わんこと
あんなコトをしてしまったのに、人型の彼とはまだ唇すら合わせたことがないことに気付いた。
ずっとオレを想って、伝えられなくて、悩んでくれていた彼への初めての。
痛むほどの胸を抱えながら、重ねた唇の柔らかな感触。それだけで、お互い指先まで痺れてしまうのが伝わり合った。
次の瞬間、ぎゅっと強く抱き締められる。
切羽詰ったような腕の強さと、身体をいたわってくれる指先の優しさに、想いの大きさが伝わってきた。
「・・なぁ、それって・・・」
「そう。オレも黒わんのこと、君に負けないくらい・・大好きってことー・・・」
太陽の匂いがする広い胸に擦り寄ると、指先で優しくあごをすくわれて。見上げる視線は、深く燃えるような紅と交わる。
この鮮やかな色彩はオレだけのものだと思うと、息が止まるほど幸せで。
一度離れた唇は、今度は黒鋼から噛み付くように重ねられた。奪われるまま開けた歯列の間から割り入る舌は、好きだと
叫ぶようで。それに答えて自分も舌を差出すと絡み取られ甘噛みされて、彼の胸の中でどこにも力が入らなくなってゆく。
あごから喉を辿り胸元へゆっくりと滑り下りる指先から、あたたかい心音が伝わる。鎖骨を柔らかく撫でる感触に
うっとりと肌を震わせているうちに、いつの間にか身体は再びソファに沈められていた。
覆い被さりながら深く唇を貪られ、何度も角度を変えるたびねばついた水音が響く。
口腔へ送られる唾液を夢中で飲み込むと、彼がまた獣のように呼吸を荒げている事に気付いた。
「え・・ちょっと待って、まさかまたする気・・?も、もうムリだからー・・・・」
「おまえにんなこと言われたら・・ガマン出来る訳ねぇだろ・・」
想いを明かしたことが彼を煽り立ててしまったらしく、何とか逃げ出そうとソファから身を捩る。でもこんな
脆弱な身体で彼に敵うはずもなく、屈強な腕に囚われて視界はくるんと回りソファーの上に逆戻りだ。でかい図体が
圧し掛かってきて、せめてじたばた足掻いたけれど無駄な抵抗ということは自覚している。
「やあーんもぉ、ケダモノー!ご主人様の言う事聞きなさいー!!」
「ああ俺は獣だ、さっさと諦めろよ」
両手首をあっさり捕らえられ、拒む身体は強引に押し付けられた。鎖骨、胸、脇腹、指先まで丹念に舐め回すのは、
舐めるのが好きなわんこの習性だろうか。でも荒く力任せの獣の舌とは違いそれは柔らかく的確に敏感なところを嬲り、
もう抵抗すら出来ない。身体の奥の情欲が、否応なしに灯されてゆく。
「ヤぁ・・っやめて・・!またおかしく、なっちゃう・・・っ」
「おかしくなっちまえよ、なぁ・・」
繊細な愛撫に、鼻にかかった嬌声がひっきりなしに零れてしまう。気まぐれに柔肌をきつく吸い上げられるたび
びくりと四肢が跳ね、頬に熱が上り瞳はとろりと涙ぐんだ。その涙を優しい舌が舐め取ってくれて、また甘い吐息が零れる。
「は・・っぁん、・・・ぁ・・っや・・!」
筋張った手のひらに捕えられた細い指は、彼の下腹部へと導かれた。押し付けられたそこは驚くほど硬く張り詰めていて、
その熱に意識さえも蕩けてゆく。身体は火照ってゆくばかりで、熱に浮かされたようにその剛直を弄った。
「・・・ぁあ、・・ん・・・」
「おまえも・・、もう・・こんなになってる・・」
彼の指もオレのものに触れながら、鼓膜に低い囁きを流し込まれる。淫らな言葉に打ち震えると、耳朶をねっとりと
舐めた舌はそのまま首筋へと這い下りて。勃ち上がるオレ自身をリズムを付けて揉みしだきながら、彼は先刻噛み裂いた
首の痕を押し開くように舌を蠢めかせた。
焼けるような痛みは敏感な箇所への刺激と交じり合い、脳髄が痺れるような酩酊感へと溶けてゆく。
「・・ゃ・・っあ・・、はぁ・・」
指先は徐々に力を失い、戦慄く唇はもう言葉を紡ぐことすら出来ない。全ては、現実から遠ざかってゆく。


(・・・すき・・・・・)

意識が霞んでも、この胸にただ一つ確かに残るのは。
思考が薄れるたび、逆に鮮明になってゆくものは。
黒鋼への、強い想い。


座り直した彼は、くたりとソファに沈む細い身体をそっと抱えるように抱き起こした。
向かい合い跨らせて、一つになる。彼が求める事が分かったけれど、その前にこの想いをもっともっと伝えたくて。
目の前の存在へ向かう愛しさのまま体を折り、そそり勃つ彼の象徴へと唇を寄せた。
「ファ・・イ・・」
「・・・・・ん、・・」
先端から舌を絡ませ、筋を辿りながら口腔に含んでゆく。硬く熱い男根は、血管を浮き上がらせながら張り詰めて。
先端を吸い上げると引き締まった腹筋が緊張し、咥えるのが辛いほど太くなった。猛々しい彼のものに口を犯されていると
思うと、眩暈がするほど妖しい感情が湧き上がる。口に入りきらないそれを愛しむように、その形を舌で辿り唾液を塗り付けて。
淫らな水音を立てながら唇と舌で想いを伝え、自ら喉奥を突いた。
頬張る息苦しさに潤む瞳で上目遣いに見遣ると、その痴態に彼は眉根を寄せる。そして腕を伸ばし、脇から腰のくびれ、
小さく膨らむ双丘へとじっとり撫で回すように彼は手のひらを滑らせた。
そして残滓にぬめる蕾に指一本を宛て、じりじりと挿してゆく。
「あ!や・・、ぁあ・・っ・・」
思わず口を離し悲鳴を上げるオレに構わず、指はゆっくりと内襞を味わうように抜き挿しされた。押し返す圧迫に
逆らう感触が、獣に荒々しく擦り上げられた快感を蘇らせて切なく喘いでしまう。
折られた指が感じるところを掠め、脊髄を電流が駆け抜ける。煽り立て弄られるたび、たどたどしく幼ささえ感じる
自分の嬌声がどこか遠くで聞こえた。朦朧としたまま再び上体を起こされ、胡坐をかく彼と向き合って跨せられて。
「・・あ・・ッ、・・あぁ・・・ん」
逞しい首に両腕を回し擦り寄ったまま、ゆっくりと降ろされてゆく。先端がひたりと宛てがわれ、その熱さに躊躇うけれど。
一度放たれどろどろに蕩けきった後孔は、待ち望んだように柔軟に彼を受け入れた。まだ熱を孕みヒクヒクと余韻に
痙攣するそこに、深々と突き上げられる。密着して奥まで吸い付くように、オレだけに向けられる激しい欲望が
結合してきた。充満する彼と心も身体も絡み合い、混じり合って一つになる悦びがまた胸に溢れる。
痺れて溺れるようなそれは、何という快楽だろう。
「ぁ・・イっ、イ・・、・・あ、ひぁ・・・・・」
「俺も・・すげぇ・・いい・・」
自分の重みでこれ以上なく繋がった箇所を揺すり上げられ、内側を刺激する強い摩擦に頭を振る。ソファに崩れ落ちた
オレに再び覆い被さってきた黒鋼は、腰を両手で掴み突き入れたままの蕾に叩き付けるように腰を進めた。
「ひ・・ぃ!や・・っあぁ、あ・・ぅッ」
容赦なく最奥を抉られ、内壁は痙攣し彼をさらに締め付けてしまう。大きく引き抜き最奥まで穿つ、絡み付く内壁を
擦りきるような注挿に、全てが熔かされてゆく。貫かれるままに悲鳴を上げ、閉じた睫毛を伝い涙が零れた。
好きなように揺さぶられ、仰け反った白い喉に食い付かれて。
「くぅ・・、ん・・」
「好きだ・・・、もっと・・欲しい・・・・」
荒い呼吸が重なり、髪ごと耳を噛まれて仔犬のように鳴いた。激し過ぎる突き上げに四肢が跳ねて、繋がる部分が
きゅうっと窄まる。抱き締めてくれる彼にすがり付いて、絶頂へと上り詰めて。
「ファイ・・・・・!」
「っぁ!くぅ・・っ、イ・・!!・・・ッッぁ、あああああーーーッッ!!!」


(・・・すき・・・・・)
理性など消え失せ、ただ獣のように絡み合う。
この胸にただ一つ残るのは、焼け付くような貴方への想いだけ。








鼓動が、伝わってくる。手のひらに感じる毛並は、少し固いけれどぬくぬくとあたたかい。
頭を上げ目を擦ると、犬型に戻った黒鋼の腹枕で寝かされていた。いつの間にかソファからベットに移動されており、
身体は綺麗に拭われている。紅い瞳がオレを見て、甘えるように頭部を肩に擦り付けてきた。
瞼を舐める彼の鼻先を人差し指で押して、そっと口付ける。
見れば、三角の犬耳がどうも下がりがちだ。どうやらオレの言うことを聞かず、強姦紛いなことをしてしまった
自責の念にかられているらしい。確かに何度も好きにされて腰はだるいし節々は痛むけれど、それでも黒鋼の気持ちが
すごく伝わってきたから。
犬耳をくいと引っ張り上げて、囁く。
「すごく、悦かったよぉvもっと激しくしても、よかったのにー・・vv」
獣の状態にも関わらず「ぶっ!」と息を吐いた黒鋼は、起き上がり四肢を突っ張って、があぁぁ!と吠えた。
わんこでも噴き出せるんだねぇと芸が出来た犬を褒めるように拍手すると、埒があかないとみたのかわんこは半獣へと
姿を変える。
「お、おまえ不用意な事を口にすんじゃねぇ!!またあんなコトになっても知んねぇぞ?!」
オレに刺激的なことを言われるとドキドキしちゃうらしい可愛いわんこは、必死に平静を保とうとしてるようだ。
そんな様が可愛くて微笑みつつ、ふと思い出す。
「そう言えば、忠告された通りになっちゃったねぇ。あの困ったお友達が家に来た時言ってたでしょ、
こんな凶暴で恐ろしいペット飼ってると、咬まれるぞって!本当に襲われちゃった、あの人も結構鋭いねー」
「・・まあ、あいつが鋭いのは認めるがな・・」
苦虫を噛み潰したような顔で頷く黒鋼の様子に、他にも言われたことを思い出す。
ヤキモチ焼いてるとか、抱き付く度胸がないとかーーーこの表情から慮るに、全部本心を言い当てていたのだろう。

「おまえとずっと一緒にいたかったから・・人間になれたらと、俺はずっと願ってた。
好きだって伝えて、おまえを両腕で抱き締めるのが・・俺の夢だったんだよ」
半獣の姿のまま隣に寝そべった黒鋼は、隠していた胸の内をやっと語る気になったらしい。
オレもずっと、黒鋼が人間だったらって願ってた。オレだけでなく、黒鋼も同じ想いを抱いていてくれたのだ。
「えー?でも告白どころか、黒わんったら人になったら冷たくなったじゃない。オレ寂しかったんだよぉ、どうしてー?」
「・・・・いざ人になったら、おまえを守ったり、気持ちを伝えるだけじゃ足りなくなったんだ。
・・おまえを、俺だけのものにしたくなって・・」
言葉を途切れさせると、黒鋼はベットの中でぎゅっと抱き締めてくれた。
何より大好きな、強くあたたかい腕で。
「・・でも俺は、所詮飼い犬だ。気持ちを伝えたって困らせるだけだろうし、万一耐えられなくて襲っちまったりしたら
おまえをどれだけ傷付けるか。どうしたらいいか分からなくなって、・・結局何も出来なくなった」
「・・黒わん・・」
苦しかったのだろうけれど、いつも全身で愛情表現してくれてたわんこが人になった途端手も握れずに悩んでいたのかと思うと、
何だか面白くて吹き出してしまった。俺は真剣なんだと小突かれて、でもやっぱり腕の中でクスクスと笑ってしまう。
こんなに大好きな君が、こんなにオレを想ってくれていた。
「おまえ、昔からよく細かいこと悩んでるだろ。人になったら、その気持ちが少し分かった」
「あ、分かってくれたー?人間って難しい生き物でしょ!」


でも、ひとつ大事なことが分かった。
こうして相手の為に心を悩ませて、思いやるのも大事なんだろうけど。
もっと、大切なこと。
だって、わんこの君が正直に気持ちを示したから、君と分かり合えたのだ。
「時には、さ。動物みたいに、素直な気持ちになるのも大切なんだね。
色々先回りして悩まないでさ、自分に正直になるの。
そしたら一番大切なことが、見えてくるのかもね」


自分の感情を素直に出すのが苦手なオレだけど、黒鋼の前でだけは泣くことも笑うことも正直に出来る。
わんこの黒鋼は、いつだって駆け引きも算段もなく、全身でただ真っ直ぐに愛情を表現してくれたから。
だからオレも、黒鋼の前でだけは素直な気持ちでいられるようになったんだ。
でも彼の前だけじゃなくて、そういうことって大切なのかもしれない。
本当に、大切なもの。本物の気持ちを、いつも大切にして。
そしたらきっと、大事な事をもっとたくさん見つけてゆけるのだろう。


「今なら、分かる気がする。黒わんが、人になれた理由」
「理由?」
頷いて、自分の胸と彼の胸にそれぞれ手のひらをあてた。
とくんとくんと、同じリズムで刻む鼓動。この中に、同じ気持ちを抱いている。
「この気持ちが、オレ達の一番大切なものだから。
わんこの胸に生まれた本当の想いが・・・こうして形になったんじゃないかな・・」
一番、大切な想い。
オレの想いと、獣の胸にも生まれた本物の想いが重なったから。


広い胸に寄り添い、この世で一番愛する者へと微笑みかける。
「黒わん、オレを抱き締めて告白するのが夢だったんでしょ?もう一回、ちゃんと聞きたいなーv」
「・・・・・・あぁ・・」
照れたように目線を逸らせ微かに頬を赤らめたわんこは、意を決したように起き上がった。
オレを軽々と抱き上げると、逞しい両腕で息も出来ないくらいぎゅっと強く抱き締める。
「好きだ・・ファイ」
「オレも、黒わんが大好き!!ずっとずーっと、一緒にいようねーv」
こんなに大切な、素直な気持ち。
抱き締め合って口付けると、幸せな気持ちが体中に溢れた。




本当に、大切なもの。本物の気持ちを、いつも大切にして。
そしたら、大事な事をもっとたくさん見つけてゆけるんだ。
それを教えてくれた一番大切な君と、これからもずっとずっと一緒だからーーーーー





おしまいvv





長いお話、ここまでお付き合いありがとうございましたー!!最終話は表に置くか裏に置くか悩んだのですが、
獣えろはマニアックすぎるが、半獣えろは極めて一般的だな!!ということで表に置いておくことにしました!!
めでたしめでたし〜♪
直線上に配置
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