金持ち黒鋼物語・再来編4
「おい、おまえが逃げたら始まんねぇだろが!」
「はっ始まらなくていいですーっ!!」
予想外の展開に逃げ出す隙もなく、ベットに乗り上げた黒鋼に後ろから羽交い絞めにされてしまった。逞しい腕にがっちりと
捕らえられてしまえばもう、もがくことすら出来なくなってしまう。成す術のない状態で、広い胸から伝わってくるのは
聴き慣れた力強い心音。
(あ・・ダメ、この音・・・・)
いつも抱き締められるたび包まれる響きは、いつもその後沈み込んでゆく世界を否応なく蘇らせて・・・動けないだけでなく、
抵抗する気持ちすら溶かされてしまいそうになる。
けれどこのまま身を委ねたら、とんでもないコトになってしまうのは確実だ。
「あのなぁ、こいつにイチから教え込んだのは俺なんだよ。このカラダを知ってるのは俺だけだ、何も知んねぇ親父が今更
しゃしゃり出て勝てるとでも思ってんのかよ」
「ああ、ファイちゃんはまだ小僧のやり方しか知らねぇのか。だったらもっとキモチいいモンがあるってこと、お義父さんが
教えてやんなきゃなぁ」
「ちょッ、ちょっと待ってってば!二人とも、オレの意見を聞いてよぉっ」
自分を挟み睨みあう親子を説得すべく、蕩けそうな意識を必死の思いで奮い立たせた。けれどいざ二人の視線が集まると、何だか
口篭ってしまう。ひとつの紅の深さにさえ気持ちが昂ぶるのに、ふたつの双眸を浴びれば動揺してしまうのは仕方がない。
「しょ、勝負なんかしなくたって・・オレが好きなのは、黒様だけ、だから・・!」
「んなこた分かってる、でも親父の事が気になってんのも事実だろうが。だから今ここで、おまえは俺のもんだってことを
はっきりさせてやる」
確かにお義父様には黒鋼を重ねてときめいてしまうけれど、だからって何もこんないかがわしい勝負をしなくたっていいではないか。
(ど・・どうしてこんなコトに・・?!)
くらくらする頭で思い返せば、そう、そもそもの原因はお義父様じゃないか。義父の悪ふざけに乗せられて、こんなとんでもない
事態になってしまったのだ。
「お義父様!もうこんな冗談、やめて下さいー・・っ!」
「何だよファイ、俺の気持ちを冗談だと思ってんのか?寂しいなぁ、俺は本気で可愛いと思ってんだぜ」
必死の主張は軽く却下され、ベットに乗り上げた義父が閉じ込めるように両腕をついた。後ろからオレを囚える黒鋼の鼓動に
溶けてしまいそうなのに、低い囁きも深い紅も瓜二つの姿に前から迫られて頭の中が混乱してくる。
(じょ、冗談じゃないって・・いくら何でもこんなコト、本気でしない・・よね・・?!)
義理とはいえ父親と、しかもこのままじゃ3人で・・なんて、そんなふしだらなコト。絶対にいけない、オレは黒様だけのものだし、
お義父様だってお義母様だけのもののはず。ただからかって遊んでるだけだと信じたいけれど、向かうところ敵なしの義父は正直
何をしでかすかまるで見当が付かず、彼の暴走を唯一止めることの出来る義母は不在だ。
ともかく解放するよう説得せねばならないのに、掴まえられた身体はそれだけで力が抜けて、寄せられる鋭い紅に意識が
朦朧としてしまう。僅かな理性を振り絞ろうとしても、唇は戦慄き瞳が潤むばかりだ。
「怖いのか?ふるふる震えちゃって、可愛い仔猫ちゃんv大丈夫、すぐ天国みたいにキモチよくしてやるからな」
「だっだから、それがダメなんです〜・・っ」
「それがダメっておまえ・・まさか本当に、親父にされた方が感じるんじゃねぇだろな?俺の目の前でそんなになったら、
その後どんな仕置きされるか覚悟しておけよ」
脅しつける黒鋼にギリリときつく締め上げられて、腕の痛みに小さな悲鳴を上げた。それを聞いて口端を上げ凶悪に笑う彼は、
だんだんこの状況を楽しみだしたような気がする。お義父様の甘い言葉に惑う心は、黒鋼の独占欲にがんじがらめにされてしまう。
「俺以外にされて、感じんじゃねぇよ・・」
「ぁ・・あ、黒さ・・ま・・」
責め立てる甘い鎖は、夜毎呑み込まれる官能の波を呼び起こし胸先をツンと尖らせてしまう。
こんなに薄く真っ白な寝着では、間近で見詰めるお義父様にすぐ分かってしまうはずで、恥かしさに頬が熱くなった。
「へえ、苛められて感じんだ?小僧、こんな可愛いコに随分いやらしいコト仕込みやがって」
「ダ、メ・・っ、お義父、さま・・ぁ・・っ」
白いシフォンの上着の下は、ふわりとした白のショートパンツ。そこから伸びる白い脚をぺたりとベットに倒していたら、
義父が膝裏を掴み抱え上げるようにして強引に大きく開いた。はしたない格好に、羞恥で脚先まで震えが走る。
「とろとろにしてやるよ、可愛いファイちゃん。ホラ小僧が怖いカオして見てるぞ、んー?」
「ゃ・・っ、おねが・・っやめ、てぇ・・っ」
目の前の瞳はまるで獲物を狙う獣のように鋭く光り、助けを求めて振り向けば同じ光を放つ紅。
“欲しいものは手に入れる・・そういう血が、俺にも親父にも流れてるんだ”
黒鋼の言葉を、思い出した。
ふたりに流れる、野蛮な血ーーーか弱い子羊がいくら抗ったって、二匹の獰猛な狼に敵うはずなどないのだ。
「昨夜は可愛がってやれなかったからな、溜まってるだろ?」
「じゃあ今日は遠慮なく、たっぷり可愛がってやってもいいんだな」
「ぁっ・・だめ・・っ!・・・あ、ぁ・・」
(お願い・・誰か止めて・・)
止めて欲しいのは。
一番、いけないのは。
オレを捕らえるふたりじゃない、このオレ自身だ。
理不尽なバトルの一番の原因は、オレ自身にあるのだから。
黒鋼はいつも強引だけど、オレが本当に嫌がっていることは絶対にしない。だから義父だって、しないはず。
そう、オレが本気で拒めばふたりはすぐに解放してくれるはずなのだ。
なのに、オレは。
絶対いけないコトだってよく分かってる、分かっているのに。
黒鋼のことが大好きで、まるで未来の彼のような義父にも胸が高鳴ってしまって。
口では拒否したって、理性ではダメだって分かってたって、心の奥に潜む本能は求めている。
淫らな欲望を見透かされているのだと思うと、恥ずかしくて死んでしまいそうなのに。
黒鋼に捕えられたこのままで、義父に淫らなことをされてしまったら。
一対一ならまだしも、オレひとりいやらしい姿をふたりに見られてしまう。倒錯的な状況に何故か鼓動が高鳴り、眩暈を覚えた。
筋張った手のひらが、欲望を煽り立てるように柔らかな内腿をゆっくり撫で上げ、すでに僅か形を成す下穿きの奥へと
近付いてゆく。思わず零れそうになった甘い喘ぎは、後ろからあごをすくわれて黒鋼の噛み付くような口付けの中に溶けた。
「俺以外に聞かせるなよ」
「何だよ、鳴き声が聞きてぇのに」
「ッ・・ぁ、は・・・」
重なる卑猥な囁きに腰の奥が痺れて、匂い立つような情欲に支配されてゆく。甘い禁忌が、オレを手招きする。
このまま、禁断の領域に入ってしまったら。道を踏み外して、真っ逆さまーーーきっともう、引き返せない。
義父の指が薄い寝着越しに胸の飾りを掠めただけで、背筋に電流が走った。
「ゃっ・・!ァん・・っ・・」
「いいなァ・・感じやすくて」
「仕置きが必要だな、おまえは・・」
淫らな反応が彼らを煽ってしまうのか、前と後ろから聞こえる息遣いが荒くなってゆく。
獣じみたそれに、ふたりに嬲られ虐げられる自分を夢想する。
胸が震えて、心が溶かされて。いっそこのままめちゃくちゃにされてしまいたく、なってしまう。
それは意識が遠のくほど・・・濃密で魅惑的な、秘密。
(おねが、い・・・だれか・・・たすけ・・て・・・・)
こんなことダメだって、誰かオレの目を覚まさせてーーーーーー
ファイたん大ピンチ!!やばい・・ここは表なのに!!!!
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