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氷の足枷B

砕けた鎖は高く鋭い音を響かせて、硝子の破片のように、無機質な床に散らばった。

ファイの伏し目がちな長い睫毛が、ゆっくりと、持ち上がってゆく。
深みの増した、蒼い宝石の瞳に焦点が定まり、黒鋼の姿が映り込んだ。
小さな唇が、そっと、開かれたー

「・・くろたん・・」

その時。

尖塔の小部屋を開けた時の比ではない、凄まじい音と圧力が、黒鋼を襲った。
「・・・ッッ!!」
崩れるように膝を付いた黒鋼を見て、ファイはその細い腕を伸ばした。
「黒たん・・?どうした・・の?」


ー触れた瞬間。
おぞましい音とともに、黒鋼の腕が赤黒く焼け爛れた。
「っ!!」
すぐさま腕を引いたファイの脳裏に、見知らぬ景色が、濁流のように流れ込んだ。

「・・・あっ・・!」

棒で外界に引きずり出された時、母はすでに焼け爛れていてー

「嫌、だ、・・っ」

周りの者が皆、狂ったようにもがいて、ー

「いや・・っ」

火で炙られても、水底に落とされても、死ねなくてー



見知らぬ?  ・・違う   これは    オレの記憶だ



しゃん、

鈴の音が響き渡り、浮遊郭は霧のような静寂に包まれた。

途切れそうになった意識を戻した黒鋼が顔を上げると、目の前にファイが倒れておりー
あの日と同じように、扉の前で姫が静かに微笑んでいた。

「・・ファ・・」
倒れ付すファイの頬は、一筋の涙に濡れていた。
「あの時と同じです。魔力に蓋をしました。今は、触れても大丈夫ですわよ」
焼かれた腕は刺すような痛みが走り、うまく動かせない。
逆の手で、ファイの頬の涙を拭った。その涙は、まだ温かかった。
ファイは、開放された。涙を、流せるようになった。
しかしー

「・・今の・・は・・?」
半ば呆然と呟いた黒鋼の言葉に、月の髪飾りをシャラリと揺らせて頷き、黒髪の少女は室内へと歩みを進めた。
「だから申し上げたのです。決して、鎖を解いてはならないと。
・・・まさか貴方が、私の言い付けを破るとは・・」
ファイの元でついと膝を付き、まだ形の残る鎖の欠片を摘み上げる。
しかし触れると同時に、それは銀の砂のようにさらさらと崩れゆく。
「この者に宿る力が、余りに強すぎるのですわ。
強すぎる力は、周りのものを無作為に飲み込むのです。先程のように・・ね」

あの脳を潰されるような音も、身体を締め付けられるような圧力も、その強大すぎる力ゆえ。
触れれば、皮膚が焼け爛れる。
本人の意思とは関係なく、全てを飲み込む、忌まわしく怖ろしい、その魔力。

「だから、こいつは・・」
黒鋼は、ファイの細い肩を、そっと抱いた。
眠るようなその美しい顔は、何の穢れも知らぬように見えるのに。
「きっと彼は生まれた瞬間、母親はもちろん、周囲の者を皆・・殺してしまった。
いえ、ひょっとしたら胎児のうちに、母を殺してしまったのかもしれません。
母が死んでも、胎児は死ねない・・」
姫は哀しみを湛えた瞳で、黒鋼の腕の中のファイを見た。
「その先は、想像するに余りありますわ。
その忌まわしい力ゆえ、彼は何度も殺されている・・しかし死なない、死ねないのです」

それで、自ら記憶を封じたのだろう。
生まれてしばらくの記憶が、無かったのは・・
それがあまりに、辛く悲しい、残酷な記憶だったから。

「そして彼は、あの塔に繋がれた・・。
あの部屋は、多分元は鉱石か何かの魔法具を据えた、気休め程度の防衛塔。
そこへ彼を“魔法具”として挿げ替えた・・ちょうどいいですわね、力を他へ流すことによって
忌まわしい魔力は放出されなくなり、防衛塔はとてつもない力となりーそして、彼は永久に動けない」


ファイは、道具となったのだ。生まれてからずっと、生きながら・・モノとして。
その細い肩を、強く抱き締めた。


「今は、彼をここへ運んで来た時のように魔力に蓋をしているので大丈夫ですけれど・・
私の力でも、数時間が限度ですわね。じき蓋が砕けますわ」
姫は、音も無く立ち上がった。
「さあ、どうなさいますの?
この子を連れて逃げても、哀しい過去を、繰り返すだけですわよ・・」


ファイを、自由にしても。
それは周囲を、そして何よりファイを、苦しめるだけなのか。
ならファイは、永遠にこのまま?
繋がれて、モノとして。

ファイの頬に触れた。白く滑らかな頬、長い金の睫毛。
何百年も、一人で。薄暗いあの部屋で、おまえは。
それでも、
待っていたんだ、連れ出してくれる誰かを。

ずっと。


「・・俺は・・こいつを、自由に、したいんだ。
・・笑って・・欲しいんだ・・」


姫は頷き、小さく笑った。
「魔力が断たれ、城の浮力が落ちています。墜落するのも、時間の問題ですわね」
そう言って、指で印を結んだ。指先に、ふわりと仄かな光が立ち上る。
「時間がありません。二人とも、地上へ送って差し上げましょう。
後は、御自分でどうにかなさいませ」
「な・・いいの、か・・城は・・?」
指先の光は輝きを増し、ファイを抱く黒鋼を徐々に包み込んでゆく。
「貴方は、随分私に尽くしてくれましたから。お城のことも、お気になさらなくて結構ですわ。
・・私が何故、城を空中に置いたか、お分かりですか?」
光の中で、姫はにっこりと微笑んだ。
「何時でも、跡形も無く消すことができるからですの」
「な・・っ」
最後まで、怖ろしい姫だ。

光に目が眩んで、周り一面が白に塗り替えられる。
「ひとつ、助言しておきましょう。
私の施す蓋は、この子の身体に作用しているのではありません。・・・大事になさいね」
光の弾ける音がして、身体が浮き上がるような感覚を覚えた。

黒鋼は最後に、抱き続けていた疑問を口にした。
「なぁ・・ずっと、見てたんだろう?・・何故俺に何も、言わなかったんだ・・」

     
ー未来が、見えるからよー


姫の姿はもう見えなかったけれど、楽しそうなその声だけが最後に、聴こえた。




ゆっくりと目を開けると、辺りは一面の草原に変わっていた。風が吹き抜け、緑の波のように草が流れる。
見上げると、突き抜けるような青い空。緑の一筋一筋が光を反射し、眩しかった。
外だ。
腕の中の、絹糸のような金の髪が風に揺れて、黒鋼をくすぐった。

あの部屋には空がなく、
あの部屋には風がなく、
あの部屋には自由がなかった。

腕の中には、瞳を閉じたままのファイがいる。
おまえは、その瞳で見たことがないのだろう。果てのない空を。
蒼の瞳が、澄み渡る空を映したなら、それはどれほど・・綺麗な色になるのだろう。
両手で、白く冷たい頬を包んだ。眠るような、美しい顔を。
数百年、君は、繋がれ、閉じ込められていた。

「ーファイ・・・外だぞ・・・」


遠くの空に、ゆっくりと堕ちてゆく、巨大な城郭が見えた。
姫は、城と運命を共にするようなー
「奴じゃない、か・・」

あの城で、ファイの鎖を解いた時、
体が動かなかった。

蓋が砕かれ、ファイが目覚めたら・・俺は死ぬのかもしれない。
ファイが生まれたときのように。

「・・・・『身体に作用しているわけではない』・・」
姫の与えた助言を口に出してみる。
それが何を示しているのか、見当もつかないのだけれど。

どうでもいい、先のことなど。
ただ、俺はー


「・・目覚めろ・・ファイ」

氷のような頬を撫でると、その奥に、徐々に極僅かな温かさが生まれてゆく。
長い、睫毛が震えた。

ファイが、目を覚ますー
次の瞬間、蒼の瞳が見開かれ同時に、腕の中からその姿が掻き消えた。

「?!・・っ」
とっさに見回したが、ファイの姿はもう何処にも見えない。
黒鋼は、舌打ちして立ち上がった。
「なろぅ・・逃げたな・・」


ファイは、自分の身体がどうなっているのか、理解したのだ。
黒鋼の命を奪う前に、目覚めたと同時に他の場所へと飛んだのだろう。

「何の為に、解いたと思ってんだ」
目を閉じ、耳を澄ます。
風の音にまぎれてごく微かに・・、消え入るほど微かに聴こえる、彼の音。

それが、死の音であっても。

「諦めるなって、言ったじゃねぇか!」
黒鋼は、草原を蹴った。



身体に感じた、あたたかく柔らかな草の感触が瞬時に、冷たく硬い岩のものに変わった。
そこは小さな洞穴のようだった。
入り口から薄い光が差し、辺りは静寂に包まれている。
・・オレには聴こえない。
あの日、周りの人々を狂わせた、そして今・・大事な人を襲った、自分の音が。
恐ろしくて、心臓が破裂しそうで、ファイは自分の胸に手を当てた。
呼吸が乱れて、苦しくて堪らない。

生まれた日のこと。
「・・そう、だ・・だから、オレは・・」
思い出したくなかった。
思い出せば、分かってしまうから。
自分は、二度と、自由にはなれないと。

「・・あの人の、言う通りだね・・」
自由になりたかったから、思い出したくなかったんだ。


本当は、ずっと、自由になりたかったんだ。


誰もいないところへ。
意識が戻った瞬間、強く願った。
「・・あの人を・・殺してしまう・・ところだった・・」
掠れた声で呟き、震える、自分の両の手の平を見た。
この手は、この体は、忌まわしい力に犯されている。

ーもし、追いかけてきたら、どうしよう?
そしたらすぐに・・逃げよう。誰もいないところへ。

足元に視線を落としたファイは、身体を強張らせた。
視界の中の草が、見る間に枯れていった。

ーまさか

そう気が付いた瞬間、瞳の中に、見たくもない光景が映りこんだ。
洞穴の外の光景がー
その洞穴は、岩山の中腹、崖に面していた。
その下に広がる森が、飲まれるように枯れていく。
自分の存在する岩山を中心に、死の津波に襲われるように、緑の森がみるみる灰色に変わっていく。
怖ろしくて目を強く閉じても、瞬く間に一面が灰色に変わるその映像が、直接脳に送り込まれる。
耳を塞いでも、聴きたくもない音が、鼓膜の奥に流れ込んだ。
干からび倒れる木々、生き物の断末魔ー


ファイは崩れるように座り込んだ。涙が溢れる。
「・・もういやだ・・」
がくがくと震える両手で、顔を包む。もう、何も、見たくない。聴きたくない。
「何処へ行けば・・いいの・・」

ー追いかけてなんか、来るわけないじゃないか。
オレの魔力を浴びた、死の森をこえて。
オレの魔力で、近づくたび張り裂けそうな身体で。


来るわけなんかー


「甘く見んなよ」
弾かれるように顔を上げたファイの目に、その、来るはずのないものが映った。

「・・・黒・・っ!!」

「逃げんな」
よろけるように後じさった、その腕を強く掴まれる。
嫌な音がして、皮膚が焼ける匂いがした。
「だめ!離して!!」
叫んだけれど、その手にはさらに力が込められた。

ー飛ばなきゃ。誰もいないところへ。

なのに、景色は変わらなかった。
飛べない。

ーこのままでは、彼が、焼け死んでしまうのに。

何故なのか、分かる。
オレは、本当は、彼と一緒にいたいのだ。
彼が来てくれたことが、嬉しいのだ。

ー彼が、死んでしまうのに。
飛べないんだ。

ただ、焼けていく彼を、見ていることしか、出来なくて。
「やだ・・やだ!!黒た・・・っ」
涙を流して叫ぶファイを、黒鋼は抱き締めた。



ここに来るまでに、覚悟を決めていたのだ。
近づくほど、破裂しそうな身体。悲鳴を上げるように、枯れてゆく木々。
その力にー
身体より、心が痛んだ。
冷たい、哀しい、痛いーこれは、ファイの心だ。

ファイが、泣いている。

ファイの元に行けば、俺は死ぬかもしれない。
けれど、その力が・・あまりに哀しかったから。

だから、早く、おまえの元に行きたかった。
おまえを、抱き締めてやりたかった。

ファイが、泣いている。



焼けた手で、白く滑らかな頬に触れ、ファイの顔を上向かせた。
宝石のような蒼い瞳から、大粒の涙が、次から次から溢れている。
抱き締めても、泣き止まない。

「違う、俺は・・そんな顔させる為に、おまえを自由にしたんじゃねぇんだ・・」

どうしたら、おまえは、この痛みからー

「違う・・」

俺が、見たかったのは。
黒鋼は、ファイに笑いかけた。
「ファイ、わらってくれ」

「・・くろ・・・」
泣き顔のまま微笑もうとするファイを、力の限り抱き締めた。

俺が抱き締めたいのは、痛みを抱えるその心。
心から笑うおまえを、見たいのに。




身体の感覚がなくなる。
凄まじい音に耳がやられて、ファイの声も、自分の声も、聞こえない。

死んだら。

俺が死んだら、またファイは誰かに、囚われてしまうのだろうか。
再び、今度こそ永遠に、閉じ込められてしまうのだろうか。


また、人形のような身体になってしまってもー
おまえは、生きているんだ。おまえには、心があるんだ。
見ない振りをしても、本当は、痛くて苦しくて、深く、哀しんでいるんだ。
また、その永遠に、おまえが囚われてしまう前に。


伝えよう。
少しでも、その孤独が、哀しみが、癒えるように。


力が入らなかったけれど、それでもファイを抱き締めた。


「俺が死んでも、おまえがこの先、どんな苦しいことがあっても、覚えていてくれ」

「俺はおまえを愛している。ずっとずっと」


ファイの口が動いたけれど、聞き取れない。
泣くなと言っているのに。
なあ、わらってくれ。
命のある限り、抱き締めているからー・・











「・・・?」
気が付くと、何時の間にか、あの凄まじい音が消え失せていた。
感覚をなくすほどの痛みが・・ない。
「な・・?」
黒鋼は強く抱いていた腕を緩めて、自分の体に視線を移した。
さっきまで焼けていたはずの身体。目を疑った。
「傷が・・ねぇ・・?」
その声に、ファイは強く閉じていた目を開いた。
そして目の前の愛しい人が生きているのを確認して、瞳を瞬かせた。
「いや・・俺だけじゃねえ・・」
洞穴の外に出る。


一面の輝く緑の森の上を、瑞々しい風が、流れゆく。


「・・全部、元に・・?」
姫が言った言葉。
「身体に、作用しているのではない・・」

身体でなければ、心?
ファイの心で、この力は。

ファイの力は消えたわけではない。流れ出る、その力は確かに感じられるのだけれど。
しかしそれは、さっきまでの冷たく哀しいものではなく。
温かく、優しい力だ。
全てを癒し、包み込むような。

『未来が、見えるからよ』

姫の言葉を思い出した。
このことを、姫はー

「ファイ!!」
駆け戻ると、ファイは呆けたように、座り込んでいた。
「ファイ!もう大丈夫だ、力が・・変わってる」
抱き締めると、蒼い瞳がゆっくりと瞬いた。
「聞こえてるか?しっかりしろ。おまえはもう・・自由に、生きられるんだ」
呆然とした視線が、ゆっくりと黒鋼に移される。

「くろたん・・いきてるの・・?」
「ああ」
「くろたん、どこも痛くない・・?」
「ああ」
「ねぇ、ふれてもいいの・・」
「ああ」
「・・くろたんと・・いっしょに・・いられるの・・?」

そうだ、と強く抱き締めると、ファイの瞳からまた涙が溢れ出した。
肩に顔を埋めて泣くファイの、柔らかい髪を撫でた。
「なぁ・・笑ってくれ・・」
涙を拭ってやって耳元で囁くと、ファイは、

花のように、微笑んだ。


ずっと、見たかったんだ。
おまえの、その顔を。











「なんで手ェ繋いで歩かねえといけねんだよ!バカップルもいいところだぞ!!」
「いいじゃないのー♪本当は嬉しいんでしょー?くーろたんv」

あれから一ヶ月がたった。
俺は賞金稼ぎに戻り、ファイと旅をしている。
魔法を使えばすぐ億万長者にもなれるし、世界征服も簡単だよーとファイは笑っていたが、
今まで囚われていたファイに普通の生活をさせてやりたかった俺は、
魔法を使うことを禁じ、まあこのように地道にこつこつと稼いでいるのである。

ファイは何百年も繋がれていたせいか、何かに繋がっていないとどうも不安を感じるらしい。
そういう訳で、何かと言うと手を繋ごうとする。
身体のせいじゃなく、心の問題だ。
その内外界に慣れれば、不安定な感覚も消えていくと思う・・が、こいつのことだ。
いつまでたっても慣れない振りをして、手を繋げとせがまれるような気もする。
こいつは信じられないほど綺麗なので、男同士でとは思われないかもしれないが・・例え男女と見られても、
いい年して手を繋いで歩く姿は、明らかに笑われものだと思う。
大体、連れと手を繋いで歩く賞金稼ぎがどこにいる。子連れ狼じゃあるまいし。

周りに誰もいないのを確認し仕方なく手を出すと、ファイは俺の手をきゅっと握って、嬉しそうに笑った。
「やっぱこうしてると、落ち着くーv」

笑顔を見ると、まあいいかと思う。しばらくこうしていよう。街までまだあるし、誰も来まい。
「脚、疲れたら言えよ」
「うんー。て言うかオレ、飛べるんだけどねー」
「飛ばなくていい、疲れたら俺が抱えてってやる」
「えっ、本当ー?!じゃ、疲れた疲れたー!」
そういって飛び付いてきたファイを、ため息をついて見せて抱え上げると、相変わらず羽根のように軽かった。
「もっと食えよ、おまえ」
「数百年飲まず食わずだったから、食事にまだ慣れないんだよねー」
「食わなきゃ慣れないままだ」
そうだね、じゃあまず料理の練習から始めてみようかなー、なんて笑いながら、ファイは俺の首に腕を回した。
ファイから感じる、柔らかい力。

ファイが訪れると、枯れた大地には澄んだ泉がこんこんと湧き、枯れた木々は一斉に芽吹いて花を咲かせた。
そんな様子を見るたび、ファイが今どれほど幸せなのかが感じられて、オレもそれを幸せに感じた。


自由になったなら、君は何をしたいのだろうー


「なあ、何かしたいことはないか?」
「今してるよー」
「あ?」
「黒たんとこうしていたい、ずっと」

俺の顔を覗き込んで微笑みかけるファイが愛しくて、その唇に口付けると、ファイはまた嬉しそうに笑った。

「じゃあ・・どこか連れてって欲しいところはあるか?」
「一緒なら、どこまでも。地の果てまで、連れてって、黒たん」





見上げると、どこまでも果てしない、澄み渡る青い空。
空を見上げ、青い空を映しこんだファイの蒼い瞳は、この世の何よりも美しかった。

連れて行こう。
世界は、どこまでも、どこまでも、広がっているから。




あたたかい力に包まれて、広い草原いっぱいに、やさしい花が咲いた。
まるで世界が、微笑んでいるかのように。







めでたしめでたし。

ちなみに何故姫が、最初からさっさと黒鋼にファイをあげなかったのかというと、
苦悩する黒鋼が見たかったからです。
ファイから発せられる力についてはちょっと分かり辛かったような気がするので解説すると、
平たく言えば、心の根本が幸せなら正のパワーが出て、不幸だと負のパワーが出ると・・。

ここまで読んで下さってありがとうございました!

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