学園ラブコメ15のお題
10 祭
樹々も徐々に彩付き、季節は秋。
もうすぐ、学園中が待ちに待っていた、楽しい文化祭がやってくる。
「じゃ、うちのクラスの出し物は、コスプレカフェに決定ー!」
ダントツ多く付いた正の字から、結果は一目瞭然。
文化祭委員の発表に、男子からは歓声が上がり、女の子はエー?!とどよめく。
オレのクラスの今日のホームルームテーマは、学園祭についてである。
お化け屋敷や屋台など幾つか案があったのだが、多数決で男子はほぼ全員コスプレカフェに投票したようだ。
色んなコスチュームに身を包むというそのカフェに、心惹かれるらしい。
ちなみにオレは、お化け屋敷に一票を投じた。
(お化け役やって、黒たんをおどろかせたかったんだけどなー)
きっとお化けの格好しておどかしたって、ぜーんぜん怖がってくれないだろうけど。
逆に黒鋼が普通に暗がりにいるだけで、お客さんはお化けより彼を怖がるかもしれない。
想像してくすりと笑っているうちに、出し物の話し合いが始まる。
最初不満を言っていた女の子達も、「服何にするー?」なんて、一度着てみたかったコスチュームを上げあって
笑っている。何たってせっかくの一大イベント、楽しまなければ損。何に決まっても結局皆、胸を弾ませているのだ。
話し合いの結果、3交代制で女の子はウェイトレス、男は裏方と決定。
オレは料理係がいいなと席を立ったところで、後ろから声を掛けられた。
「ファイ君、お願いがあるんだけど、いい?」
振り向くとそこにいたのは、女子で一番背の高い、すらりとした女の子。
クールな性格に中性的な顔立ちで、男子よりむしろ女子に人気があるという話だ。
「お願いって?オレに出来ることならー」
「うん、他の子はメイドとか看護婦とか女の子らしい服着るみたいだけど、私そういうの苦手なんだ。それでー」
「それでね!」
と、オレ達の間に割り込んできた、女の子数人。瞳がキラキラと輝いている。
「ふたりで学校の制服、取り替っこしてコスプレしたらいいと思うの!!
絶ーっ対似合うもん!!すごい名案でしょ?」
「と・・取り替っこぉー?」
唐突な提案に、思わず妙な声が出てしまった。
オレはともかく彼女が男装して接客すれば、彼女目当てで女子客も来るだろう。
メイドばかりではあまり女子集客は見込めないし、その件に関しては確かに名案だと思うけれど。
ハンサムな彼女は勢い立つ女の子を制し、困ったようにオレを見て肩をすくめる。
「無理にとは言わないの。ごめんなさい、変なお願いして」
でもファイ君の女の子の制服姿って、私も興味あるしと涼しげに笑われた。
「き・君までそんなこと・・。でもウェイトレスは女の子の役目でしょー?」
「ファイ君は女の子より可愛いんだもの、裏方なんて絶対ダメ!もったいないわ!!
他の学校の生徒も来るでしょ?絶対ファイ君のこと、女の子だって誤解するよ!
本当は男の子だって教えてびっくりさせたい!楽しそうー♪ね!!」
きゃいきゃいと顔を見合わせて笑う女の子達は、悪気はないのだろうけれど。
さすがに女装して接客というのは恥ずかしい。うまく流して、断ろう。
(でも女の子の制服着てたら、黒たんの反応が楽しいかもー・・)
やっぱり怒るかな?でも案外、気に入ってくれたりして。
「あはは、楽しそうだね。いいよー」
「本当?!やったーー!!!」
女装の恥ずかしさと黒鋼の反応の楽しさを天秤にかけた所、結局楽しさが勝ってしまった。
女の子達には手を取り合って喜ばれてしまい、もう引っ込みはつかない様子。
まあいいか、年に一度のお祭りなんだから。多少羽目を外しても、皆多めに見てくれるだろう。
「聞いたぞ。おまえのクラス、コスプレ何とかってのやるんだってな」
「そうそう!珍しーい、情報早いねー」
その日の帰り道、どうも黒鋼の機嫌が悪いと思ったら、眉間に皺を寄せたまま低い声でそう切り出された。
普段噂話なんか、全く興味持たないのに。我がクラスの不穏な出し物の噂が、聞き捨てならなかったらしい。
まさかもう、女の子の制服を着ることまでバレてしまってるとか。
「・・おまえ何着るんだ?まさか、他の奴に乗せられて、妙な格好する気じゃねぇだろな・・」
さすが黒鋼、しっかり読まれてる。
「何言ってんのー。コスプレするのは女の子だけで、オレは制服だよ。
もしかして、オレも可愛いコスプレするんじゃないかって、ちょっと期待してたー?」
「んなワケあるか!」
冗談を本気に取ったようで、怒ってぷいと向こうを向いてしまう。
この調子じゃ、女の子の制服のコトはまだ知れてはないようだ。せっかくだから、当日驚かせてやりたい。
回り込んで顔を覗き込むと、頬がちょっと赤かった。あれ、本当に何か期待してたのかな?
「安心して、ただの制服だからー」
にっこり微笑むと、ならいいとぶっきらぼうな返事。
嘘はついてない、本当に制服だ。ただし女の子の、ね。
君の期待に、答えられるといいのだけれど。
そしてついにやって来た、文化祭当日。
「かかかか・可愛いーーーーーー!!!!!」
着替えたオレを見るなり上がった叫び声で、クラス中に注目されてしまった。
「そ、そんな・・笑ってくれたほうが・・」
反応に困る。
「すっげぇ、マジ可愛い!!彼女にしたい!!」
「細ーい!白ーい!脚きれーい!!」
皆集まってきてしまい、完全におもちゃ扱い。
(ああ、黒鋼の反応を見たいがばっかりに、とんでもない約束しちゃったよー)
やっぱりやめておけばよかった。それに、スカートが思ったより短い。
いくら女子の中で一番背が高くても、やっぱりオレの方が背が高いのだ。
故に、どうしても丈が短くなってしまう。
ちょっと動くたびチェックのプリーツが揺れて、今にも見えそうで落ち着かない。
「外国の女子高生モデルみたいーっv」
「写真撮っていいー?!」
こんな恥ずかしい姿、それだけは勘弁して欲しい。
「ねぇ、思ったよりこれ、スカート短くて・・や・・やっぱりこれ、やめにしないー?」
「ダメーー!!!」
女の子達の勢いが、何だか怖い。
(わーん、黒たん助けてー・・っ)
心の中で叫んだ時、バンと勢いよくドアが開く音がした。
「・・・お・・ま、え・・!!」
聞き慣れた声。オレの唯一安らげる、何より大好きな。
「黒たぁーんっ!助け・・っ」
やっぱり君はオレの正義の味方だと、目を輝かせて振り向いたーが。
そこにいた彼は、正義の味方どころか、地獄から這い出てきた鬼のようだった。
「・・て・・」
くれそうもなく、安らぎからは程遠い。ついに噂を聞きつけて駆けつけたようだが、
どうやら女の子用制服姿がお気に召さなかったようだ。
最近余り見ない程の怒り様に、さすがにちょっと腰が引けた。女装は、嫌いみたい。
「そ、そんなに怒んないでよー!もう着替えるからー」
とにかく教室から脱走しようと脇をすり抜けたが、案の定がっちり腕を掴まれ、有無を言わさない力で引っ張られた。
「あー!黒鋼くん、また独り占め!ずるいーー!!」
きゃあきゃあ騒ぐ教室からすごい速さで引き摺られるように遠ざかる、けど。
「わっダメ!そんな走るとっ・・スカートが!」
めくれちゃう、と言う前に憤怒の表情で睨まれた。
物置状態の視聴覚準備室に押し込まれ、黒鋼はまた音を立ててドアを閉めた。
「今すぐ脱げ!!」
「えぇえ?!そ、そんな、大胆な」
「違う、そういうイミじゃねぇ、早く着替えろ!!おまえその脚・・!」
ぷいと勢いよくそっぽを向く黒鋼。よく見ると、この前の比じゃない。
真っ赤になってる。
怒ったと思ったんだけど、本当は・・気に入って、くれたのかな?
「ムリだよー。だってこれ、男子用制服着たいって言う女の子と交換したんだもん。
オレの制服は、今その子が着てるのー」
本当は、お互いもう一着別の制服を用意したので、いつでも着替えられるんだけど。
「だったらジャージでも着てろ、おまえは自覚が足りねぇんだよ!
そんな格好でほっつき歩いてたらどんな目に合うか、分かってんのか?!さっきの教室で分かったろーが!!」
珍しくオレの嘘を見破れないほど、相当動揺しているらしい黒鋼。
確かに教室ではおもちゃにされて、大変な目にあったけれど。
これは、ひょっとしてー。
「うれしい♪黒たん、心配してくれてるの?ねね、ひょっとしてこのカッコ、可愛いとか思ってたりー?」
「・・・・!」
笑って覗き込んだら、絶句されてしまった。
「・・・・・からっ・・・着替えろって・・」
迷うように目を逸らし、歯噛みする言葉を解読してみるに。
可愛いから、他の人に見せたくないから、着替えろってこと・・みたい。
「やったー!恥ずかしい思いして着た甲斐があったぁーv」
意外とこういうの好きなようで、照れる黒鋼の方がずっとずっと可愛い。
ついその大きな身体に飛び付くと、スカートがひらりと翻った。
脚がスースーして心許ないけれど、やっぱり着てみてよかったな。
「おまえ、そういう・・っ」
「なぁに?」
身体を離す前に腕が腰に回り、強く引き寄せられる。
「く・・」
驚いて名を呼ぼうとすると、武骨な指であごを攫われ口付けられた。
(黒、たん・・・)
舌で口内を荒っぽく撫でられると、目が潤んで膝の力が抜ける。
こうして黒鋼と触れ合えるようになったことは、幸せだと思う。けれど。
「ひゃあっ!ちょ、ちょっと待ーっ・・!!」
スカートの下に手を入れられた、そのことよりも。
ズボン越しに押し付けられた、その張り詰めた固い感触に思わず叫んでしまった。
「・・・・そんな格好でほっつき歩いてると、どんな目に合うか分かったか」
「待っ、待ってダメ!オレ今からすぐ店に出ないといけないしーっ!」
「分かってるよ、俺だって出店の荷物運びしなきゃなんねぇし・・だから・・どうしてくれんだ」
オレを解放した黒鋼は、溜め息をついて恨みがましくジロリと視線を寄越した。
「これで・・そんな・・になるのは、黒たんだけだと思うけどー・・」
「ったくおまえは。自覚を持て自覚を」
不機嫌そうな声とは対照的に、筋張った手は優しく頬を撫でる。
指は、『気に入ってる』って言ってるみたい。
「黒りんがダメって言うなら、着替えるよー・・。
女の子の制服着る機会なんて、きっともうこれで、最初で最後だねー」
「・・・・」
言葉に詰まってる。
「ね?」
覗き込むと彼は顔を背け、ぼそりと呟いた。
「・・・・制服、貸しちまったんだろ」
その様子に、くすりと笑ってしまう。やっと許可が下りたみたい。
「そんなに気に入ってくれたなら、黒たんの為に今日一日この格好でいようかなー?
他の女の子も、文化祭が終わるまで着替えないらしいしー」
「誰もんなこた言ってねぇ!!」
まだちょっと赤い頬で怒鳴られても、ね。
君の期待に、答えられたようで嬉しい。
二人とも出し物は午前当番だったので、昼におち合って一緒に文化祭巡りをしてくれるよう約束をした。
「組の中にいればまあ大丈夫だと思うが、絶対一人で出歩いたりするんじゃねぇぞ!」
昼迎えに行くまで決してクラスから離れるなと念を押して、黒鋼は持ち場へと戻って行った。
(・・女装してたって、男なんだしー・・)
意外と心配性だ。皆冗談で構ってくれてる、だけだと思うんだけど。
「あーっ!ファイ君、戻ってきたー!大丈夫?!ヘンなこと、されなかった?!」
「ヘ、ヘンってー?」
ちょっとされそうになったけど・・・オレ達のこと、バレてるんだかバレてないんだか。
もうほとんど準備の終わっていたコスプレカフェの、オレの持ち場は受付らしい。
「入り口前の席に座って、チケット売りお願いねv」
「えー?受付なんて、クラスの顔じゃない。女の子がやらないと、お客来ないんじゃないのー?」
「っとにファイ君て、自覚ないのねー」
女の子数人に、盛大に溜め息を吐かれた。何だか黒鋼にも、同じ事を言われたような。
「廊下はたくさん人が通るから、色んな人がいるだろうけど。
でも、ファイ君がヘンなことされそうになったら私達が守るから、大丈夫よ!」
「だから、ヘンってー・・」
男女立場が逆なセリフでよく分からない励ましを受けつつ、ついに開催時刻がやってきた。
運動場からポンポンと花火の弾ける音が聞こえ、廊下が徐々ににぎわいだす。
「きゃー!ファイ君が本当に女の子になってるーっv可愛いーvv」
「えっこの子、まじで男なの?!で、でもおれ全然構わないよっ」
受付というより、見せ物のパンダだ。心配していたけれど、どうも女装は意外と集客効果があるらしい。
「はーい、チケット一枚300円だよー♪ね、買って買ってーv」
せっかくなので女の子みたいに可愛くねだる振りをしてみたら、気前よく何枚も買ってくれた。
コスプレカフェは大好評で、朝からずっとチケット売りが忙しかったけれど皆楽しそうだ。
そんな姿を見ると、こっちもうれしくなってくる。
オレも早く黒鋼と一緒に、文化祭回りたいな。
忙しくしているうち瞬く間に時は過ぎ、当番交代の時間。
オレの制服をまとった彼女の登場で女の子の数が増え、午後も忙しくなりそう。
黒鋼の終了時間よりちょっと早めの上がりなので、しばらく待たないといけない。
せっかくだからもう少し手伝っていようか、それとも。
彼のクラスの出し物は、たこ焼きやチョコバナナなんかの出店だという。
道具運びだと言っていたけれど、ああ見えて実は人のいい黒鋼のこと、人手不足で
売り子なんかやらされてたりして。
(仏頂面でたこ焼き売る黒たんとか、見てみたいかもー・・)
迎えに来るまで決して持ち場を離れるなと、言っていたけれど。
(黒たんたら、大袈裟なんだから)
せっかく早く終わったんだし、働く黒鋼の様子の偵察に行ってみることにした。
とは言え黒鋼の言葉をおおっぴらに破るのも気が引けたので、人ごみを避け裏庭を通って行く。
こっちからなら、誰にも会うことはない。
出店の開かれている運動場へ向け、木々の茂る小道を歩いていると。
(あれ、前から人が来た・・)
木々の間から、こっちへ向かって来る男の子数人が見えた。私服なので、遊びに来た他校の生徒のようだ。
「あ、生徒はっけーん!ねぇ彼女、第2体育館ってどう行くの?」
どうも、広い学園内で迷ったらしい。彼女じゃないんだけど、まあいいか。
「第2体育館なら、ここを引き返してー」
「え?!何だ、このコめちゃくちゃ可愛い!!」
「脚すっげぇきれー!」
「名前何?ね、校内案内してくれない?!」
説明している途中で、いっぺんにあれこれ話し掛けられた。・・さっさと誤解を解いた方がいいかも。
「ごめんねー、出し物でこんな格好してるけど、オレ男なんだー」
「え?!」
豆鉄砲を食らった鳩のようになった一行に、さっと場所を説明し直して立ち去ろうとした、
のだけれど。
「待てよ!」
突然、手首を掴まれた。結構力が強い。
ー黒鋼の、言っていたことを思い出した。
「ごめんね、オレ急いでるからー」
「嘘つくなよな、こんな可愛いのに、絶対男のわけねーって!本当だってなら証拠見せろよ証拠!」
ひょっとしてお酒でも少し入っているのか、げらげら笑う厄介な連中。
ひとりふたりなら流せるけれど、5・6人もいると。
どうしようか、少し眉を顰めた時。
彼らの表情が、引き攣った。
「・・・・おまえら何してる・・」
地の底から響くような、身の毛のよだつ声。
振り向くと、鬼どころじゃない。閻魔大王だって逃げ出すほど恐ろしい顔をしたー。
「黒たん!」
黒鋼はオレの腰を抱いて、奪うように引き寄せた。
「誰のモンか、分かってやってんのか・・」
背筋も凍る恐ろしげな様にたじろいだのか、それとも黒鋼の強さは他校にも知れ渡っているのか。
可哀想に、蒼ざめた顔をブンブン顔を横に振る一行だったけれど、彼はオレを後ろに隠し腕を鳴らした。
その口が笑う形に歪み、感じたのは禍々しいほどの殺気。
「く、黒たん!殺しちゃダメーっ!!」
3秒後には、彼らはのされていた。
殺すなと思わず叫ぶほど恐ろしい形相の黒鋼だったが、恐る恐る脈拍を測ると、
気を失っているだけのようだ。
「よかった・・もう、この子達案内してって言っただけなんだよー。
かわいそうに、たんこぶ出来てるじゃないの」
「何がかわいそうだ。皆殺しにするところを、これだけで勘弁してやったんだぞ。
感謝して欲しいくらいだ」
軽く手をはたきながら、今度は鋭い視線をオレに移す。
「それよりおまえ・・何でこんな所にひとりでいるんだ」
しまった、そう言えば。
「あ・・ご、ごめんねー・・?
大好きな黒たんの、たこ焼き売る雄姿がどうしても見たかったのー・・」
チケット売りしてた時みたく、瞳を潤ませて媚びた振りしてみたものの。
「てめえ、こんなこったろうと俺が来たからよかったものの、もう少しでまわされるとこだったんだぞ?!
分かってんのか!!」
「ま、まわー・・っ?!いくら何でもそんな!
コカンを押し付けるような人なんて黒たんだけだってばー!」
「コカ・・おまえがそーゆーこと言うな!っとにてめぇはっ」
大目に見てくれるかと期待した瞳うるうる攻撃だったが、やはり効果はなく怒り心頭の様子。
逞しい腕の動くのを見て、頭でもはたかれるかととっさに目を瞑った。
が。
次の瞬間感じたのは、
手のひらのあたたかい感触。
不思議に思って瞳を開けると。
黒鋼が、俺の手を握っている。
「え・・?」
そしてそのままずかずか歩き出した。
「え?黒たん、手・・っ」
「ったく、いつまたひとりでふらつくか、分かったもんじゃねぇ!」
不機嫌そうな声。手だって強く掴まれて、痛いくらいだけど。
でもとても。
「ひょっとして、ずっと手・・つないまま学園祭まわる気ー・・?」
「しょうがねぇだろーが!それに・・・声掛ける奴、いちいちシメんのも面倒だし・・
・・・こうしときゃ、俺のモンだって分かるだろ」
ぼそりと呟く声に、心臓が一度大きく鳴った。
オレは君のもの?
そうだ、さっきもそう言ってた。
大好きな人の、ものになって。
手、つないでまわるなんて。
心がくすぐったくて、笑ってしまう。
「あはは、何だか本当に恋人同士みたいじゃないー!」
「うるせえ!おまえが信用なんねぇせいだぞっ」
あたたかい手のひらが、あんまり幸せで。
胸が痛くなるくらいの、こんな想い。
恋人みたいだね。
楽しみにしてた、楽しい文化祭。樹々も彩付き、季節はもう秋。
冬が来て春になる頃、3年生になる。
3年になったら、すぐに卒業だ。
卒業、したらーーー。
大きくあたたかな手のひら、大好きな君。
こんな気持ちも、いつかいい思い出に変わるのだろうか。
きっと、思い出すと胸が痛むくらいの、
幸せな、思い出に。
砂糖吐くようなゲロ甘話って・・書くの、すっごいムズカシイ(泣)!!!トライして名誉の戦死。
深刻なお話のほうが、楽に書ける気がします・・。
15もお題があって全部書けるんかと心配してたものの、残すところ5話!
次からは、終わりに向けてちょっと深刻目にしていきたいと思います。
ファイたんの為、黒鋼にがんばってもらいたいのだ!
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