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或る国王と剣士のお話H


澄んだ泉に、輝く木の葉が反射する。
ファイが、裸足で水際を蹴って遊んでいる。
水滴が、光の中で煌く。

「あんまりはしゃぐと転ぶぞ」
ファイが振り向いた。初めて会った時から、こんなに長い時が流れたのに。
金を梳いたような髪、宝石のような瞳、透けるような白い肌。
女神のようだと思ったあの時のまま、おまえは何も変わらない。
「はーい。相変わらず面倒見がいいねー」
微笑むファイと、緑の中で輝く泉。まるで、泉の妖精のようなー
涙が出るほど美しい、その光景に。俺はまだ、君に恋をし続けている。

ふと、思い出した。
「・・覚えてるか?俺が国王付に就任したばかりの頃、一緒に泉に行っただろう。
コイン投げて祈ると、願いが叶うとかいう・・」
「うん、覚えてるよー。黒たんが、五円くれて」
「ああ、そういやそうだったなぁ。
・・あの時、お前やたら長く何かを祈っていただろう。
何を祈ってたんだ?」
するとファイは、泉に足を浸したまま、空を仰いだ。
「あれはね、実はお願いじゃなかったんだ。
だって、黒たん言ったでしょう?自分でやらなきゃ、何も叶わないって。
だから、あの時、お願いはしなかった。ただ、神様に感謝の気持ち、伝えてたんだ」
どうしても伝えなきゃいけないことがあって、何度言っても言い足りなくて、長くなっちゃたんだけど。
そう言ってファイは、胸の前で指を組み、そっと目を閉じた。
「神様」

まだ、言い足りていない。
きっと一生、何百回何万回言っても、言い足りない。
誰よりも、誰よりも、大事な、あの人に。
愛する、

貴方に。


 「・・・出会わせてくれて、ありがとう・・・」




                『或る国王と剣士のお話』・完


長い長いお話、ここまでお付き合いありがとうございました!!!
最終話になるので、恐る恐る1話から読み返してみたら・・1話ごとまるで統一性がない・・・!!!
素人にありがちな・・!!!
にもかかわらず、国王が好きだと言ってくださった方がみえるので、感謝のしようがないです。
好きだと言ってくれてありがとう。

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