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続・仔うさぎの大冒険4

「ジングルベールジングルベール♪鈴がー鳴るー♪」
天使達が鈴の音を鳴らして、世界中に幸せを振り撒く聖なる日。
弾む気持ちを歌に乗せてドアを開けると、氷のように冷えた外気はまるで頬を刺すよう。
こんなに寒いんだもの、すっかり暗くなった寒空からはきっと、真っ白に煌く雪が舞い降りてくる。
それは聖なる夜に最も相応しい、本物の澄んだ煌き。
世界中が銀色の魔法に包まれる様を思い描くと胸が高鳴って、車から跳ねるように降り立った。
「おまえなぁ、静かに付いて来いって言ったそばから歌うなっつの」
「だってー、嬉しいんだもんっvv」
先に車を降りた先生が眉間に皺を寄せて凄んだけど、本当は歌うだけじゃなくこのまま飛び付きたいくらい。

そう、言い付け通り温かくして早くベットに潜り込んだ甲斐あって、風邪をぶり返すこともなく元気にクリスマス・イヴを
迎えることが出来たのだ。
つまり、先生と二人っきりで特別な日を過ごせるってこと。しかも初めて行く、先生のお家で!
『冬休みは嬉しいんだけど、新学期まで黒鋼先生に会えないのは寂しい〜!ね、ファイちゃんもそう思うでしょ?!』
口惜しげに脚をパタつかせるクラスメイトに相槌を打ったけど、実はイヴをその先生のお家で過ごすだなんて
皆には秘密なんだ。
ねぇ、学校では皆の先生だけど、今夜は一人占めしていい?
(なぁんて・・ねv)
幼い頃からクリスマスは大好きだけど、今年のクリスマスは飛びきり特別。きっと、一生忘れられない夜になるよね。
先生がオレのこと本気で相手してくれているのか、まだちゃんとした自信がないけれど・・・
オレだけの愛しいサンタさんが、白い雪みたいな本物の煌きをプレゼントしてくれたなら。
そしたらオレは、世界中の誰よりも幸せになれるのにな。
心の中で囁いて、紅い瞳を見上げた。

「ここが、先生のマンションなんだー・・」
玄関口前で思わず立ち止まり、ブラウンカラーの外壁を最上階まで振り仰ぐ。ママゴトみたいな恋愛だって思ってたけど、
お家に来るなんて本当の恋人同士みたいだと思わず緊張していると、後ろから頭をトンと小突かれた。
「何固まってんだ。やっぱやめるか?」
「えっ?!やめちゃダメぇ!!絶対行くのーっ!」
分かったから大声出すなって声を背にエントランスのエレベーターへ慌てて駆け込んだら、リーチの長い脚で
大股に追い着いた先生に睨み付けられてしまった。5階のボタンを押すと、床は滑らかに上昇を始める。
「あのなぁ、静かにしろってんだろ?誰かに見つかったらどうすんだ」
「ぅ・・ごめんなさいー・・。だってすごくすごく嬉しいんだもん、つい・・・・ぁぐっ?!」
鐘の音と共に開いた扉の向こうへと脚を踏み出した途端、武骨な手に口を押さられた。
攫われるように非常階段の陰へ引き込まれ、その上突然抱き込められて息が止まりそうになる。
(え?!こ・こんな所でー?!そんな焦んなくたってオレ・・っ)
吃驚して顔を上げると、彼はシッと短く口を尖らせた。耳を澄ますと、近付いて来るのは誰かの足音。
(なぁんだ、隠れただけなんだー。期待しちゃった・・じゃなくて、これってひょっとしてピンチー!?)
慌てて隠れた様子から察するに、向こうから来るのは先生のことを知ってる人なのかもしれない。
そう思うと恐くなって、腕の中でぎゅっと目を閉じた。
先生と生徒が付き合うなんて、本当は絶対にいけない事だから。
もしバレたら先生にすごく迷惑が掛かって・・きっともう二度と、会えなくなっちゃうから。
息を止めて小さく縮こまっていると、じき足音はエレベーターの中へ吸い込まれていった。
「もういいぞ。今のは隣の奴だ、俺が教師してるって知ってるからな・・っておまえ、震えてんのか?
なんだ、さっきまで散々騒いでただろが」
「うぇえ・・恐かったよぉー・・・」
小さく呟いてジャケットにしがみ付くと、彼はちょっと笑って頬を撫でてくれた。
だって離れ離れになったら、哀しくて苦しくて死んじゃうもの。
早く卒業して、大人になりたい。そしたらもっと安心して、一緒にいられるのに。
・・・大人になるまで。ううん、大人になってからもずっとずっと、先生と一緒にいられたら。
黒たん先生も、そう思ってくれてたらいいんだけどな。

極端だと笑われつつ忍者紛いの忍び足で歩いて、突き当たりのドアまで辿り着くと先生は
手馴れた手付きで鍵を開けた。その仕草に、ここが彼の暮らしてるお家なんだって胸が高鳴る。
おらよ、と開かれた部屋に滑り込んで、鍵を閉めてもらえば。
「お邪魔しまーすっvvもう騒いでいいー?わぁい、なんか先生の匂いがするー♪」
「何だそりゃ・・コラ、あんまり騒ぐとつまみ出すぞ」
先生の脅しも何のその、入っちゃえばこっちのものだもん。早速ブーツを脱いでお邪魔したリビングは、
エアコンを入れておいてくれたらしいくほわりと温かい。当たり前だけどオレの部屋みたくクマのぬいぐるみや
水玉のクッションなんかはなくて、ブラックの多いシンプルな家財道具は先生らしくてドキドキした。
「オトコの人の一人暮らしって散らかってるイメージだったけどー、先生はちゃんと片付けてあるんだねっ」
「おまえが来るっつーから片付けたんだよ、一応・・」
呟きながら皮ジャケットを脱ぐ先生は、わざわざお部屋をきれいにしてくれていたらしい。オレの為に準備して
くれたんだと思うと本当に彼の特別になったようで、嬉しくてつい頬が緩んでしまう。
先生はジャケットもよく似合うけど、その下の黒のカットソー姿も格好いい。うっとり見惚れちゃうけど、
オレのドレスアップ姿も見てもらわなくちゃ!
「ねぇ、黒たん先生vオレね、クリスマスっぽくおめかししてきだんだよー!!どぉ?」
襟と裾にふわふわのファーが飾られた、お気に入り白コートを脱いで小首を傾げる。
薄いグレーの柔らかなモヘアノースリーブに、二重のドレープがふんわりした雪色のミニスカート。
雪の結晶みたいな透かしのストッキングと、シルバーの可愛いプチネックレスには瞳と同じ色に光る石。
ボディラインにフィットした薄いモヘアは、クラスの皆にうらやましがられるおっきめの胸と腰のくびれが
強調されて、ちょっと色っぽい・・はずなん、だけど。
今日は恋人たちの特別な日だもん、頑張って誘惑しちゃうんだから!と気合を入れたのにも関わらず。
「どうって真冬に、んな袖無しと短けぇスカートはいてるとまた風邪ひくだろうが。大体ちゃんと食ってるか?
手も脚も簡単に折れそうだぞおまえ」
「そーじゃなくってー!可愛いか可愛くないかゆって欲しいのー!!」
くるりと一回転しスカートをひらめかせてむうとむくれると、いつも通り大きな手でなだめるように頭をポンポンと
撫でられた。やさしい感触に頬が熱くなって、それ以上何も言えなくなってしまうのもいつものこと。
悔しいけど先生の手のひらには全然敵いっこなくて、でもこのままじゃいつものお子様扱いで終っちゃうから。
そう、今日は手強い先生を倒すべく、秘密兵器も持ってきたんだ!
めげないぞと拳を握り締めつつソファにちょこんと座り、下げてきた紙袋から銀のリボンを結わえた真っ白な箱を
取り出した。
「黒たん先生、これ先生へのクリスマスプレゼント!頑張って作ったケーキだよー♪ぜーんぶ食べてねv」
「な・・っ!おまえ、俺が甘いモン苦手だって知ってるだろが・・」
眉間に皺を寄せて後ずさる彼に、だーいじょぉぶって微笑んでリボンをしゅるんと解いた。
クリスマスといえば生クリームたっぷりの甘ぁいケーキだけど、これはビターなガトーショコラ。
パウダーシュガーを雪みたいに振り撒いて、クリスマスらしく銀の柊を飾って、我ながら可愛らしい出来だと思う。
そしてこのケーキには、秘密兵器が仕込んであるのだ。名付けて、恋の媚薬作戦!!
なーんて、度数の高い洋酒をお父様の棚から拝借してたっぷり練りこんだ上、さらにめいっぱい染み込ませただけだどね。
(先生酔っ払っちゃってー、いけない展開に縺れ込んじゃったりしてー・・v)
そんな期待を込めつつ、買っておいてくれたローストチキンだのサラダだの色とりどりに盛り付けられた
クリスマスパーティセットも並べて、二人で乾杯をした。

なのに、結局。
「な・・なんで酔っ払わないの〜っ?!」
「酔っ払うって・・こんなのが酒のうちに入るかよ」
ケーキもきれいに平らげてくれたのに、美味かったぞ、なんて平然としてる彼の様子は全く変わることはない。
話には聞いていたけど、お酒の強さは想像以上みたいだ。
(く・・作戦失敗だよう・・!)
チラと向こうを見た先生の視線を追うと、時計はもうすぐ夜の9時。
酒も飲みたかったけどおまえ送んねぇといけないからな、なんて呟く彼は本当にケーキの洋酒など数に入らず、
しかもこれからオレを家に送る気満々らしい。でも、まだ諦めないもん!
「送らなくていいの!今日はお友達の家にお泊りだって言ってあるんだもん、絶対帰らないんだからーっ!!」
「あぁ?おまえなぁ、泊まりはナシだって言っただろうが。我侭言うんじゃねぇよ」
女の子が帰りたくないって言ってるのに、戸惑う様子すら見せず立ち上がろうとする先生。

オレはまだ子供で、自分の生徒で・・だから異性だってことすらあまり意識してくれてないみたい。
少しくらい女の子だって思って欲しくて、ちょっとくらい戸惑って欲しくて、思い切って先生の逞しい腕に抱き付いて
モヘアごしの柔らかな胸を押し付けた。恥ずかしくて、彼を上目遣いに見詰める瞳が潤んでしまう。
・・先生が一瞬息を詰めたのは、気のせいかな。
「黒たん先生は・・オレのこと、もっと触りたいって思ってくれないのー・・・?
オレが、まだ子供だから・・・・?オレは生徒で・・問題とか起きたら、困るから・・?」
「駄目だって言ってるだろ」
いつもより、何だか恐いくらいに低い声。不機嫌そうな表情は・・怒ってるの?困っているの?
クリスマスを一緒に過ごしてくれるだけじゃなくて、もっと欲しがる我侭なオレを・・先生はやっぱり怒ってるのかな。
でも、オレは貴方のことが大好きなの。本当はいけない事だって分かってても、止められないくらい。
溢れる想いは、言葉で伝えるだけじゃ全然足りない。我慢できないくらい好きなのに、先生はそうじゃない。
やっぱりオレが想うみたいには、先生はオレのこと想ってくれないの?

「だって・・・せんせぇのこと、すきなんだもん・・ひとつに、なりたいよぅ・・・」
オレ、すごく恥ずかしいコト言ってる。頬が熱くて、喉が震えて。
掠れた声で囁くと、先生は視線を逸らせた。
どうして逸らすの?
やっぱり本気で相手になんて、してくれてないんだ。
沈黙が痛くて、哀しくて。
零れ落ちそうな涙に、俯いた時。

苦しいくらいに、抱き締められた。
その腕の強さに驚いて、身を竦める。
「俺が・・」
「え・・?」
眉を顰めた先生の表情も、苦しげに見えたのは。
「俺がお前に手を出さねぇのは、ガキだから、とか問題が起きたら困る、とかじゃなくて・・
大事にしたいからだ」

ーーー大事にしたいから。
今まで触れてくれなかったのは、オレのこと大事にしてくれてたから・・?
生徒としてしか見てないとか、問題が起きたら困るとかじゃなくて。
こんな風に苦いくらい、オレのことを大事に想ってくれていたから。

その言葉に、身体が震えて。
「イヴの夜だよ?・・オレの大切なサンタさん。・・ねぇ、プレゼントが欲しいの・・」
胸いっぱいの気持ちを込めて、囁いた。

と、身体がふわりと浮き上がって。
膝下と脇に腕を入れすくうようにひらりと抱き上げられ、先生はそのまま隣の部屋へ向かった。
ダークカラーのベットにとさりと横たえられて、先生と見詰め合ったら。
心臓が破れそうなくらい、高鳴った。



      

ようやくやる気になってお姫様抱っこです。というかまだえろまで行かず・・!!何てことだあああ
ちなみにノースリーブのモヘアは、ぷりすての稲田さんネタです(笑)。
ラジオで、モヘアのノースリーブは最高だと燃えてらっしゃったので・・。確かに分かるよ!!
手触りがよく柔らかなモヘアのノースリーブと、女の子の華奢な腕の組み合わせ・・ついつい抱き締めたくもなるさ!!
しかも稲田さん、「ファイが着ても似合うよねv」て振られて「案外・・」とかさりげに肯定して下さったので、
黒たん先生も同じ属性にした!クールを装いつつ、実はモヘアファイたんに萌え萌えなんだぜ!!

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