帰るなり、あんなことをされて。
辛い身体をおして、義父のいい付け通り家の事を済ませたファイは、力の入らない足で自室へと戻った。
薄い夜着でベットに顔を埋めると、微かな鼓動が等間隔に聞こえる。
さっき垣間見たのは、自室でパソコンに向かう、大きな背中。
仕事を片付けたら、ここに来るのだろうか。
続きを、する為に。
そう思った途端、心臓の音が高くなった。
指先の震えを止めたくて、シーツをぎゅっと握り締める。
この家は、義父と自分、他には誰もいない。
息を潜めて瞳を閉じると、カチ、カチと時計の秒針が大きく響いた。
母が生きていた頃を、思い出す。
義父はオレに優しかった。何か特別なことをしてくれるわけではないけれど、
自分をいたわり気に掛けてくれていることは伝わってきて、オレは彼が大好きだった。
義父が来てしばらくして、母は病気で亡くなった。
男手で子育ては辛かろうし、血さえ繋がってない。
オレは母方の実家へ引き取られることになっていた。
『こいつの面倒は俺がみる』
しかしお葬式の時、彼はオレの頭に大きな手のひらを置き、そう言ってくれた。
母はもういない。その上義父とまで離れるのはさみしかった。
だからその言葉と、頭に置かれた手のひらが。
オレは、涙が出るほど嬉しかった。
お葬式が終わり、弔問客も皆帰ってしまって、とたんに家はがらんと広くなった。
心から愛してくれた母は、もういない。
その時やっとそう実感して、胸が裂けるほど哀しくて。
オレは義父に抱き付いて、泣いた。
その時、初めて彼に襲われた。
「続きして欲しいんだろ」
突然割り込んだ低い声に、遠い日へ沈んでいた思考は途切れた。
彼の言葉は、オレを縛り付ける。
シーツから顔を上げることも、返事をすることも出来ないオレに、一歩づつ、重い振動が近付く。
義父は、もうすぐそこに。
身体を強張らせた時、身体の両脇のスプリングがギシリと沈み込んだ。
「それとも、逃げてぇか・・」
真上からの抑えられた声。覆い被さるように腕を付かれ、見えない糸が怯える顔を引き上げる。
「誰も助けになんか来ねェよ。どれだけ泣こうが・・喚こうが」
耳元で囁き、彼はすいとベットから身を起こした。
「自分で脱げよ」
「・・・、ぇ・・」
「見ててやる。自分で脱げ」
そう言って黒鋼は、長い脚を組んで机に腰掛けた。
「・・な・・」
「して欲しィんだろ。さっきあんなにしてて、今更カマトトぶんのか」
口角を少し上げ、嘲るような義父にーオレは、結局何も言えず俯いた。
鋭く射抜く、紅い瞳。
オレはそれに、抗えない。
小さなボタンに掛ける指の震えが、止まらなくて。
指先を、あの紅が見ている。
意識すると、上手くボタンを掴めない。時間をかけて全部外し、するりと上着を落とした。
肩が震える。上目遣いに義父を見ると、彼は面白くなさそうに頬杖をついた。
「さっさとしろよ。下も」
「・・・や・・」
「脱いで、脚広げろ」
瞳に涙を浮かべたファイは、それでも震えながら下穿きを脱いだ。
言われた通り、ベットに座って。
「広げろ」
「・・・・・ぃ、・・や・・」
俯いて、震える両膝をぴたりと付けるファイに舌打ちし、黒鋼は手近な縄を手にした。
「手伝えってのか?世話の焼けるガキだ」
大股で近付くと、義父はぐいとファイの細い脚を掴んだ。
「・・やァ・・ッ」
抵抗しようとする膝を簡単に折り、腿と脛を合わせて硬い縄で戒める。
強引に大きく開脚させ、片方ずつベットの脚に縛り付けた。
短い縄できつく繋がれると、大きく広げられた脚はもう閉じられなくて。
「・・ぁ・・」
秘部を余すことなく晒されて。
ーいやらしいところを全て、彼が見ている。
眩暈がするほどの恥辱にファイは震え、長い睫毛を涙で濡らした。
なのに、死にたいほどに恥かしいこの姿を、紅い瞳が見ている、
そう思うと。
指の先がじんじんと、熱を孕んだ。
「・・感じてやがんのか・・?てめぇ、こんなことされて・・」
折れそうに細い腕をひとまとめに括りベットへ打ち付け、筋張った指は敏感な箇所を辿る。
下半身をきつく拘束された囚われの身は、どんな陵辱からももう、逃れる術はない。
全て、彼のされるがままに。
「あ、ぁあ・・っだめ・・ぇ・・・っ」
緩く執拗に撫で回されて勃ち上がったそれからは、透明の蜜がとろとろと溢れ出す。
もどかしさに耐えられず腰を揺らすたびギシリと縄が軋み、ファイの柔肌に食い込んだ。
白い腿に、紅い縄跡が浮かび上がる。
不自由と苦痛の中のねじ込まれるような快感に、うわ言のような嬌声が部屋に響いた。
「・・やぁ、・ぁ・・っあん・・・ぃい・・っ」
「なぁ、何が欲しい、言ってみろ」
「ぁん・・、もぉっ・・・ダメぇ・・・っ、ぉね、が・・、・・っ」
「もっと懇願しろよ」
恍惚とした蒼い瞳が、涙で潤む。きつく拘束されたまま、ファイは呼吸を荒げた。
「・・挿れ、て・・く、ださ・・っ、おとぉ・・さ、ん・・・」